君に捧ぐ
「…………」
「…………」
シーン…。
保健室に着いたがお互いに無言でなんか気まずい…。てっきりそのまま私を置いて行くのかと思っていたが。
「そこに座ってろよ、すぐ戻る。」
なんと、手当てをしてくれるらしい。
「はい…。」
とりあえず素直に頷いてみる。どうしよう…このまま私の知らない田島くんだったらーー。
ガラッ
「…保健室の先生いなかった…」
「だ、大丈夫だよ。自分で出来るから」
「動くな」
「えっ」
突然声を荒げるものだから驚いた。なにか気に障るようなことを言ったのだろうか。
「オレがやるから」
「あ、ありがとう…」
田島くんは私のすりむいた傷を舐めてる……って、え、な舐めてる!?
「え、ちょっと田島くん」
「消毒しないとバイキンが入るだろ?」
「いやいやそこは普通に消毒液を使ってよ」
「こっちのが早い」
「汚いから止めて!」
なんで傷口を舐めるの!?恥ずかしいんですけど。
「…………」
「話があるんじゃなかったのか?」
「あっ…とね、私…本当に田島くんのことが大好きなんだ。あのね、入学初日で緊張してた私に笑って話しかけてくれて嬉しかったんだ。あの日から少しずつ田島くんの良いところとかに惹かれていったの。私は泉くんよりも田島くんの方が大好きっだったんだ」
息継ぎ無しで言いたいことを一気に言った。やばい…また泣きそう。
泣き顔を見せたくなくて恥ずかしくて保健室から逃げようと立ち上がったら田島くんに抱きしめられた。どどどどういうことなのこれ。
「あああの田島くん」
「なんで逃げんの?」
いや、私の方が聞きたいんですが…。
「だって他の人達が見たら田島くんが勘違いされちゃう」
「オレは…別に気にしない」
「だって田島くんは私のこと嫌いなんじゃー…。」
「んんんん!?」
んなっく、くるし…っ。な、なんかニュルッとしたものが入って…って!!
(し、舌ーっ!?)
あまりの出来事に混乱してきた。それになんか頭がくらくらしてきた。
「はぁ…っ。」
「…不安だったんだ…いつも、こずえは泉と楽しそうに笑ってるしー…。」
泉もこずえといる時は他の奴とは違う……なんか愛おしいものを見るような瞳をしていたから…。
「え、泉くんには田島くんのことで相談に乗ってて貰っただけだよ」
「そっか…」
「本当だよ」
「ありがとな…」
「なんでお礼言うの?」
「こずえが"好き"だって言ってくれて」
「私の方こそありがとう」
「「…………。」」
よかった…いつもの田島くんに戻ってる…。
「悪かった…」
「え?」
「無理矢理…キス、して」
「ビックリしたけど嬉しかった。」
最初はイヤだった…けど、田島くんが私のこと妬いてくれて嬉しかった。
「じゃあもう一回、していいか?」
「ちょっと待ってその前に」
「?」
スーハー…。
「改めて私は田島悠一郎くんが大好きです」
「オレも好きだよ、こずえ。」
チュッ。
ーー初めての田島くんとのキスは、無理矢理で怖かったけど二回目のキスは…その、甘くとろけるようでしたーー
(田島!こずえにキスマーク付けるなら、もっと分かんねぇとこにしろよ)
(え、嘘キスマーク!?)
(いいじゃんかー!こずえはゲンミツにオレのなんだから!)
(いつの間にしたの)
(こずえが屋上で寝てるとき!つい付けたくなっちゃって!)
(ななななな!?)
(やれやれ…)
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