「ん、きもちい。ナースさんもわかるでしょ? 治ってきてるの」

唇で締め付けながらこくんと頷けば、頭が上下するに従って扱かれるのがいいのか、口の中の質量がぐんと増していく。まだ完全ではないにしても、勃起不全など片腹が痛くなる程度には吹き飛んでいる。
舌先を先端の窪みに捩じ込めば、とろりと溢れたものが味蕾を苦味で潤す。思わず顔をしかめると、すみませんと他人行儀に謝られ、なだめるように髪を撫でられた。

「ちょっと我慢して下さいね? ナースさんのお口気持ちいいから、もっと堪能させて?」

「んぅ……っ」

頭に置かれた手でぐいと下方向に圧を掛けられ、今し方刺激していた先端部が上顎に擦り付けられる。くすぐったいような、ぞわぞわとした感覚が快感の一種であることを覚えさせられて以来、そこに彼の舌や中心が触れるとびくりと腰が震えてしまう。

「…もう少し奥まで、頑張れます?」

やや掠れた声に胸が高鳴る。強引に咥えさせられるのも実はそんなに嫌いではないのだが、端からだと苦しそうに見えるらしい。もっとも、普段は彼がする側なので深くまで愛撫してもらっているのは自分の方だが。

「ん、ぐ……ぅっ…」

唇をより開いて、えずかない程度まで喉に近づけてやる。はぁ、と頭上から零れた甘い吐息に遥は溜飲を下げ、舌をぴったりと押し当ててずるりと抜き出す。再び口腔に深く含んで吸い付けば、堪えるためかきつく髪の先を掴まれた。ちゅっと唇を離し、しっかりと怒張したものを間近で見ていると、心許ない下肢が徐々に疼き始める。

「ん……、さすがですね。ほんとに治しちゃうなんて、ナースさんはすごいなぁ」

「……」

「もー、そんな物欲しそうな目で見られたら抑えられないですよ。俺も溜まってるし…ね、お口に出していいですか?」

「……勝手に、しろ…」

自分からそうしたいなんて口が裂けても言えない。もちろん最初は適当に反応させてやればいいかと始めたものの、恋人の気持ちよさげなリアクションは存外悪くなかった。それに――自分でも認めたくないが、性欲処理というシチュエーションもあってか、口腔内を犯されると本当にそのためだけに『使われている』ような錯覚に陥り、妙な興奮で下肢の熱が高まっていく。
絶対に知られたくない事実だが、彼はにやにやと厭らしく笑って太腿をつうっと指でなぞってきた。

「勝手になんて言いつつ、ナースさんほんとはドキドキしてるでしょ?」

「っ…してない…」

「えー、嘘。ちゃんと見てましたよ。嬉しそうにぺろぺろしながらお尻揺らしてたの」

指摘された羞恥にきつく目を瞑れば、頬を優しく撫でられて無意識に手のひらへ寄り添ってしまう。

「えっちなナースさん、いいこと教えてあげますね。俺にご奉仕しながら、触ってほしいとこ、自分で弄ってみて?」

「! そ、なっ…」

「そしたら一緒に気持ちよくなれますよ? ほら、舐めて」

遥の後頭部をそっと押して、湊は眼前へ中心を近づける。てらてらと唾液に濡れたそれはあまりに卑猥で、ごくんと己の喉が鳴る音を遥は聞いた。

「ふ、っん……」

かぽりと先端の丸みを口内へ嵌め込むと、褒めるように髪をかき混ぜられて心の内側が温かくなる。括れを舌先でくりくりと抉って、ゆっくりと熱を奥まで呑み込んでいく。触れた粘膜からびくびくと脈打つ鼓動が伝われば、もっと気持ちよくしてあげたいと恋人らしい想いが募ってきた。

「ん、んむ…っ…」

「っく……、ナースさん、それやばい……」

次々に分泌される唾液を絡めて、ちゅぷちゅぷと音を立てながら唇で扱き上げる。たっぷりと濡らした舌で裏側を柔らかく擦り立てれば、先走りがとぷとぷと溢れて喉を焼く。強制的に流れ込む苦味にさえ興奮を煽られ、きつく覆われた下着をじわりと濡らしてしまった。

「ん…、口狭くて、とろとろできもちい…。ね、ナースさんもほら、自分で触って?」

「ふ………っ、ぅ、んん…っ」

ためらいがちに、遥の手がスカートの中へ伸ばされる。舌と上顎を往復で刺激され、劣情ですっかり高ぶってしまったものを下着越しに撫でれば、口腔の奥から腹を通り抜けた快感が下肢と直結する。いつも彼を迎え入れている場所まできゅんと疼いて、体の開口部が全て彼のものにされてしまったみたいで。
そこで、ぷつりと理性の糸が千切れた。

「んっ、む、ふぅ……っ」

レースの中に手を突っ込んで、既にとろとろと蜜を垂らしていたものを輪にした指で慰める。怠い手に力を込められず、つい腰を前後に揺すって擦り付けてしまうのは止めようがない。
その間も愛撫は休まずに、もう片方の手で同様に扱きながら、熱の筒と化した口内で半ばまでを呑み込んで。とろけてぬめった舌を中心に絡めてじゅううと奥で吸い付けば、彼の腰ががくがくと奔放に跳ねる。

「う、わ……っ、はぁ、も、出そ……。ナースさん、顔見せて…」

倒れそうな体を支えるべく後方に手をついた湊が、遥の額をぐいと押しやって上向かせる。ばちっとかち合う視線。快楽に溶けた湊の眼差しに、ぴゅく、と手の中のものが興奮の蜜を軽く飛ばす。

「んぁ……っ、む……ぅ」

「ん、く……、すげーえっちな顔、してんじゃん…」

それはこっちの台詞だ、と同調して、くちくちと自慰の手を早める。口の中をみっちりと占領しているものもそろそろ限界だろう。今にも弾けそうな塊を、熱心に舌を動かして責め立てる。先端が上顎に突き当たる度にぞわりと背筋が震え、触れて、触れられている場所からの全ての快感を意識させられた。

「あー、やばい……っ、ほんと、出るから…」

ゆすゆすと腰の位置を前後され、舌の上を何度も熱で擦られる。自身を慰めていた手も使って、入りきらない部分を両手でくちゅくちゅと摩擦しつつ、濡れそぼったものをきつく吸い上げて。今にも達しそうなそれがびくびくと震える様に、頭の芯が痺れそうだ。

「く……っぅ、出す、からなっ…」

咥えたまま頭を押さえ付けられ、包み込んだものがぐうっと膨れ上がる。やがて喉に直接叩きつけられる熱情。噎せ返りそうな生々しさを触覚と味覚で嫌というほど感じながら、根元を絞り立てる手は止めない。
奥に流れ込んだ精を、こきゅ、と喉を上下させて少しずつ飲み下せば、疼いていた腹の奥がかっと熱くなる。何もされていないのに、ひくひくと腰が揺らいでしまうのが恥ずかしくてたまらない。溜まった残滓までちゅうと啜ってやり、喉に貼り付いたとろみと一緒に思い切って飲み込む。興奮しているさなかは平気なのだが、改めて思うと後味は最悪である。

「へへ、ありがと。めちゃくちゃ気持ち良かったです、ナースさん」

やたらとすっきりした顔の患者が、はにかみながら頬を撫でてくる。まぁそんなに嬉しかったのなら時々はやってやらなくもないかと、べとべとの口許をタオルで拭ってもらいながら、遥は再びほだされてしまう。

「でもナースさん、半端でしょ? 俺に歯立てないように、最後の方、自分でしてなかったんだよね」

図星を突かれて言葉に詰まっていると、腕を掴まれてベッドに乗り上げる形になる。ぎゅっと愛おしそうに抱き締められ、熱い吐息が耳元を撫でれば、じんじんともどかしさを訴える腰がシーツの上で震えた。

「今度はナースさんの番ですよ。欲求不満、解消してあげますね」


↑main
×
- ナノ -