(一昨日も、その前も……?)

桃色一色の脳みそは、湊の言葉を反芻するだけに留まった。深い思考も巡らせず、質量に疼く孔をひくつかせて布越しの湊のものを喜ばせる。

「腰抜けちゃってかわいーんだから…ここが欲しがってるの、さっきからえっちすぎない?」

「んぁ、あ……っ」

ごりごりと服越しの熱量が存在を訴えてくる。尻の下で中途半端にわだかまっていた衣類を抜いてもらい、自由になった両膝でぎゅっと湊の腰を挟む。それが嬉しかったのか、ん、と下方向から唇を押し当てられ、腕もしっかりと回して抱き締めた。
――やっと、触れられた。触れられるのも、触れるのも、ずっと我慢していたのだ。湊はこちらをストイックなアスリートか何かと勘違いしているのかもしれないが、とんでもない。遥にだってそういう欲はある。
カレーは好きだ。でもずっとカレーだと、本当に好きなのかわからなくなってしまうから。時にはカレーをわざと遠ざけて、恋しくなってから食べてみればいい。こんなに旨いものだったのかと、心の底から実感できるだろう。

「へぇ」

にや、と恋人の顔が意地悪く歪んだ。はっと遥は我に返るが、自分の口が半開きになっていることに気づいてさあっと血の気が引きそうになる。

「なんだ…」

「ふ。そんな、大したことは喋ってなかったよ。離れてみないとわかんないこともあるってことね」

たぶん、ぽろぽろ単語だけを譫言で呟いていたのだろう。その片鱗から湊はある程度の意味を悟ったらしい。ぐっと遥は押し黙った。これ以上余計な情報を与えるわけにはいかない。

「遥と違って、俺は毎日でも食べたい派だけどね。もちろん、アレンジしながらだけど」

「んっ、ぁあ……っ」

つぷ、と濡れた指が潜り込んでくると、反発しかけていた唇から鋭さを削ぎ落とされた声音が飛び出る。指の一本に緩く、深く、浅く内部を掻き回され、どうしようもないほどの飢餓感を遥はきつくしがみついて堪えた。

「考えたよ、俺も。遥はどうしたら、食べたくなってくれるのかな?って。それで、思いついたんだ。例えば毎日、カレーをちょっぴり、こっそり食べさせたり、匂いを嗅がせたり、カレーの良さをアピールしたらどうか?って」

ご機嫌な様子で指を動かしながら、湊は歌うように種明かしを始める。遥は正直それどころではないが、ボタンの真因に辿り着ける気配を感じ取っていた。

「そ、なこと、してなっ…」

「してたよ、遥は気がつかなかっただけ。ていうかカレーはあくまで例えだろ?本題は、これ」

「ひっ、あぁ…!」

抜き出された指が、ぬぷりと二倍に増えて深みに埋まる。指と言えど、慎ましやかなそこに二本もあっては質量はかなりのもので、けれども内側は従順に、むしろ喜んで粘膜を絡み付かせている。明らかに負担が少ないのだ。まるで、そこに何かをずっと咥えていたかのように。

「ぁっ、や……っ」

ぷくりと腫れた乳首が服の繊維に引っ掛かると、中の指をいっそう締め付けてしまう。ここだってそう、数日前からうっすらと痺れを纏っていた。触れられていない、はずなのに。

「……!ま、さかっ…」

目を瞠った遥に笑みを投げ掛け、湊はご褒美のつもりか、ちゅっと頬に口付ける。

「ほんと鈍いな、遥は。全然わかんなかったの?いっぱいえっちなことされてたのに」

「っ……」

「楽しかったなぁ、夜這い。布団もそうだし、体のあちこちからいい匂いするんだもん、収まらなくてさ」

ぐりっ、と腰の下から収まらないもので突き上げられ、その熱にビクッと尻が跳ねる。これが、今指を食んでいる所へ埋められたら。指の先でも届かない、未開の場所がひくひくと疼く。それを感じ取ったのかどうか、湊は焦らすようにゆっくりと指を抜いた。
浅い呼吸を繰り返し、羞恥に俯く遥にそっと頬を寄せて。静まり返った夜でもようやく聞こえる程度の小声で囁く。

「ね、ちゃんとさせて?味見じゃなくて、全部食べたい」

遥もそうでしょ?と殊更甘く問われて、遥はきゅっと唇を噛む。試験期間いっぱいの時間をかけて、ここまで切羽詰まらせておいて。よくも言えたものだ、勉強しろよ変態、と思い切り悪態を浴びせたくなる。

「ほら、腰上げて」

「やぁ…っ、それ、や……っ!」

促されるまま、半ば強引に腰を浮かせられ、狭間を熱いものでずりずりと擦られる。多少しか慣らされていないと思いきや、根気よく、と言えるか否か、毎夜の愛撫を受けた体は既にとろけていて。摩擦を起こす熱の塊を、今にも口を開いて呑み込みそうだ。

「このまま、遥が自分で入れて?手伝ってあげるから」

「ひ、やっ……」

ちゅう、と吸い付く入口をこじ開けられそうになり、遥はぶるぶるとかぶりを振って腰を浮かせようとするが、湊にウエストをがっしり固定されてしまう。

「ほら、腰立たないんだからちゃんと掴まって、ゆっくりしないと。いいの?いっぺんに入っちゃっても」

敏感な粘膜を乱暴に擦り上げられる刺激を想像して、遥は言われるがままに湊へすがりついた。震える膝に力を入れ、びくつく腰をそろそろと下ろしていった。

「っは、んあぁ……っ…」

重力に従ってぬぷぬぷと太いものが呑み込まれていき、狭く潤った内部を押し広げながら埋まっていく。浅い部分をゆっくりと、存分に擦られ、とろとろとはしたないものを中心が滴らせる。

「ん、締め付けすっごい…気持ちいい…」

「あ、やっ……いうな、ぁっ、あ――!」

湊の言葉に意識が逸れてしまい、張り出した先端がずぷんと受け入れられる。気が遠くなりそうな快感そのままに、貪欲な孔が残りの部分に食らいついていく。少しずつ隘路を貫いていくたびに、悦びを体現したものはとぷりと零れ、脚の間をしとどに濡らした。

「遥、えっちな顔してる。かわいい」

「し、てない…っ…、も、やだ…っ、ちから、入んな…っ」

「もう気持ちよくなっちゃってるの? プルプルして子鹿みたい」

腰を撫でられながらくすくすと笑われ、ぽろりと生理的な涙が頬を伝う。それを舐め取って、湊は優しく腰を抱き直した。

「うそうそ。ほら、もうちょっとだから頑張ろ」

「あっ、あぁ……!」

力が抜け落ち、自重がのしかかっても尚、湊の腕がしっかりと体を支えてくれる。尻が湊の腿に乗った辺りで奥深くをずんと突かれ、入口までがきゅうっと狭まった。

「は……、ちゃんとできたね、えらいえらい」

「っ、ふ……」

褒めるように髪を撫でられても、遥はぴくりとも動けない。熱い杭を打たれた今、腹の奥まで灼熱で満たされているようだ。その熱がじんじんと粘膜を燻らせる度に、最奥で繋がった部分を意識せずにはいられない。する、と湊の手が下腹を優しくたどる。

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