「寝かせちゃうのもったいないな。抱っこさせて?ね?」

「ん、やっ」

ベッドヘッドに背をもたれた湊の膝に跨がるよう座らされ、挿入時の体位を彷彿とさせる。腰の下に当たる欲は厚い生地越しでもしっかりと存在を伝えており、そんなことにも紅潮が増してしまう。昂っているのは何も湊だけではないが。

「んっ……」

下から唇を当てられ、何度目かもわからないキスで頭の中はぐらぐらと煮立っていく。ぐっと腰を押し付けるように抱き寄せられて、思わず体ごと跳ねてしまう。

「遥って口も舌もちっちゃいよね」

「る、さい……ん、む」

揶揄のためにいったんは離れた口も、その小さな存在を籠絡するべく再び動き出す。ざらりと舌が唇を舐め、隙間から強引に差し入れられて、分泌の増した唾液を捏ねながら己のものも引きずり出される。器用に舌先を吸われ、酸素も満足に得られぬ脳内は勝手にエンドルフィンを作り始める始末だ。時に痛みさえ凌ぐ、モルヒネの何倍とも言われる快楽物質。たかがキスで、抱き合っているだけで、幸せになってしまうなんて。歯痒い気持ちも刺激の波に押し流されていく。

「は……かわい、とろーんってなってる」

「なって、ない……」

「なってなくない。目の前で見てる俺が一番よくわかってるって」

至極嬉しそうに頬を擦り寄せ、赤らんだ耳元で鼓膜を揺さぶる声音を吹き込む。

「――おいしそう」

いったん交わってしまえば、ぐるると喉を鳴らす獣と何ら変わらない。自分がぼろぼろになるまで食い尽くす気だろう。かぷ、と喉の太い血管を噛まれ、ちりっとした痛みさえもっとと求めずにはいられない。

「…そういえばまだ、教えてなかったね」

「っん、な、にが…」

「ふふ。こっちに夢中でもう忘れちゃったの?」

「ち、がっ……」

ボタンはかろうじて、頭の隅っこに引っ掛かった状態だ。しかし何故今になってそれを蒸し返すのか、遥にはもう考える暇などない。件のボタン――彼の寝間着と色違いなのでボタンもそのようになっているが、一つずつ外されながら、インナーで隠れない鎖骨や肩を噛まれる。痛いからやめろ、とは言えなかった。甘噛みよりもやや強く、しかし次の瞬間には優しく口付けられて、結局ほだされてしまう。
前開きの寝間着を全て開けて。薄いインナー越しにゆっくりと、尖りの形を確かめるように唇で触れる。

「っあ……」

喉から押し出された声は、遥にとっては予想外の甘さに満ちていて。湊は満足そうに笑って、ぷくりと膨らんだ小さな粒をちろちろと舌先で嫐った。

「んっぁ……、なん、で、やめ……っ」

「やーだ」

「あ、や……っ」

服の上から甘く歯を立てられ、腰を震わせた刺激が中心にじんじんと伝わってしまう。下着の中で張りつめたそこは、集中的な愛撫にとろりとろりと雫を溢れさせた。

「寒かったの?ほら、服で隠れててもわかる。こりこりしてるし」

「い、わなっ……ん、んぅっ……」

率直な感想と共に凝った乳首を指で捏ねられ、普段の比ではない快楽に困惑したまま、遥はふらふら視線を彷徨わせる。

(おかしい……こんな、)

腫れぼったくなった尖りは、もはやインナーが擦れただけでもぴりっと電気が走るような刺激に変換されてしまう。最近、朝は特に気を遣って着替えなどをしていたが、ここまで敏感になることはなかったのに。
くに、と爪側で下から持ち上げるように押され、さらさらとした布地で擦られる。居心地悪そうに遥が腰を揺らすと、その下の湊のものをより意識させられ、羞恥に首の辺りまで赤みが差した。

「んっ、ふっ……」

「あ、ずるい。口塞がなくてもいいじゃん」

すりすりと指の腹で優しく撫でられたかと思えば、頂点をちくりと刺すように爪を立てられる。意図せず甘い嬌声が湊の耳元へ溢れそうになり、遥は手の甲をぎゅっと唇に押し当てた。
湊はむぅ、と冗談混じりに口を尖らせるが、不意ににっと笑ってインナーを捲り上げる。

「じゃあ俺も悪戯しちゃお」

「んむ!んっ、馬鹿……ぁっ」

胸の下まで捲ったインナーにするっと頭を潜り込ませ、乳離れのできない子供よろしく、ちゅうと乳首に吸い付いた。もう片方も手のひらでぐにぐにと平たい所を揉んでから、緩急をつけて指先で突起を捏ね回す。思わず湊を抱え込むようにしがみついてしまい、服の中の変態がふふふと嬉しそうに笑った。

「これいいね。服からも遥の匂いするから興奮する」

「ふ、ざけ……っや、め……んぁっ」

歯を押し当てるほどきつく吸い上げられ、なだめるように舌先でくりくりと転がされる。それだけでも、湊の上からやや浮かせた腰は震え、シーツについた膝はガクガクと今にも折れそうだ。
やめろと言っても聞いてはもらえず、爪の先でかりかりと引っ掛かれれば、連動した中心から快楽の証が止めどなく溢れてくる。直接そこに触れられてもいないのに、滴るものは股を流れ落ち、きゅんと窄まった蕾をしとどに濡らした。

「や、ぃや……っ、も……っ、それ…」

「無理。こうやってずっと、口に含んでちゅっちゅしたかったんだから。ぷっくりしててえっろいし…」

「ひっん、さわ、るな…っ」

胸を突き出した姿勢のまま、さわさわと不埒な手が太腿を伝って尻を撫で上げる。くいと指に引っ掛けてズボンと下着をまとめてずり下ろされ、ふるりと揺れて露になった中心が外気で冷えることにさえ快感を覚えてしまう。

「かわいい。ほら、こんなにとろとろ」

「ぅあ……っ」

ようやくシャツから頭を出した湊は、つんと上向いて濡れそぼったものをわざとらしく指先でなぞり上げる。下ろされた衣類にぽたぽたと滴るのが恥ずかしくて、いっそ全て脱がせてくれと思う。

「そんなに気持ち良かったの?こっち」

「っあ、はぁ……!」

一番反応の良い速さで乳首を舐ってやると、ぞくぞくと甘い痺れが腰を伝い落ちていく。吸い付きながら時折歯を覗かせて甘噛みすれば、抑え込んでいた声も次第に大きくなり、無意識に中心を湊の衣類に擦り付けてしまう。

「すりすりしちゃってかわいーの。遥も男の子だね」

「るさい…っ、そんな……んぁっ、は、ぅ……っ」

「そうそう。声出したほうが気持ちいいよ」

「く、ぁ……っあ、そこやめ、っ…」

両手で柔らかな臀部を揉みつつ、肉を割り開いて狭間に隠れた場所を露呈する。ひやりと冷たい空気が触れたのも束の間、くにゅっと指先で入口をつつかれ、大袈裟に腰が跳ねてしまった。

「ここ、指にくっついてくる。ふふ…一昨日もその前もそうだったね。ほら」

「あ、はぁあ……っ」

窄まった孔をぐりぐりと指の先端で圧され、もどかしい刺激にべったりとねだるような声が上がる。と、同時にぺたんと腰が湊の腿へ落ちてしまい、ひくつく場所に熱いものが押し当たればいっそう堪らなくなる。
先程から当然のように滾っていたそれを、早く埋めてほしくて。腹の奥から後孔までの隘路がただただ切なくて、きゅうきゅうと無い物ねだりをしてしまう。

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