(こんな、のっ……久しぶりで、へんになる…)

体の奥深くを叩かれる衝動。腰を掴む汗ばんだ手、熱を帯びて赤くなった肌。粘液の混ざるいやらしい音と、鼓膜を揺らす荒い吐息。五感で感じる全てに、心も体も昂らされる。紛れもなく彼とひとつになっている事実に、胸の中がきゅっと狭くなった。

「…考え事?余裕だね」

「ふあぁっ…やめ、ふ、かぃ……っ」

ぐりんと腰を抱き寄せられて、自然と湊の上に座り込む形になる。背を預けたまま奥まで入り込まれ、頼るものを求めて伸ばされた手は空を掴むばかりだ。遥は重力に従って串刺しになる他ない。根元まで咥え込んだ入口をそっと指先でなぞられ、脳味噌が沸騰してしまいそうなくらい恥ずかしかった。その上、湊は空いた両手をニットの中へ潜らせてくる。

「この体勢だとこうやって弄ってあげられるな」

「っひ!や、それ、やぁ……!」

胸の尖りをそれぞれの指で捏ねられ、先走りを溢し続けていた遥のものがぴゅくりと僅かに白濁を飛ばす。膝の上で跳ねた腰を叱咤するように、ぐずぐずの胎内を剛直で揺さぶられた。

「気持ちい?遥の中、きゅうきゅう締まる間隔が短くなってる。もうイきそう?」

「やっ、そんな、ちがっ……はあぁ!」

膨らんだ乳首を指先で弾かれ、時を同じくして中のものがずんずんと奥を目指す。体を交えたばかりの頃は痛くて仕方なかったのに、湊の先端が突き当たりを抉ると背筋がぞわぞわと震えた。

「かわいい。いいよ、イって」

「っやだ、それ…っ、だめ……ぇ…っ」

立ち上がった乳首の頂点をくにくにと揉み解すように擦る湊の指。反対側は周りごときつく捻られ、蜜にまみれた中心の根元へドロドロとした熱が溜まっていく。加えて、腰を下から入れられてしまっては旦那からも快楽からも逃げようがなかった。

「っん、くうぅ……っ、ぁ、だっ、め……っ、ぁ、ああぁっ」

容赦なく奥深くを穿つ楔にきゅっと絡み付き、びくびくとした痙攣が背筋を駆け上がって脳を揺るがす。体内のきつい締め付けには抗わず、旦那も少し遅れて欲を吐き出した。ひとりは嫌だ、と先程遥がねだったのを覚えていたのだろう。とぷとぷと内壁に染みる白濁を呑み込もうと無意識の蠕動が起こる。湊は腰を軽く揺すって残滓を出し切ってから、頭をもたげたまま僅かな雫を垂らして震える遥のものを優しく撫で上げた。

「っひぁ…!」

「ふふ。かわいかったよ、俺のでイっちゃうところ。中に出されてここも喜んでたでしょ?」

ここ、と教え込むようにとんとんと奥の突き当たりをつつかれ、達したばかりで強すぎる刺激から逃れようと遥は背を反らして腰を引き上げる。しかし絶頂の余韻から回復しきっていない体は思うように動かず、ぐいと腹に回された腕で押さえ込まれてしまった。

「こーら、逃げないの。…でも、そろそろちゃんと見つめ合いたい、かな」

「あ…っ…」

埋め込まれていたものが抜け出ていく感触にさえ、惜しむような声が漏れてぱっと口許を覆う。ベッドへ仰向けに転がされ、膝を立てた脚の間からとろりと欲の証が零れた。それを塞ぐように再び押し付けられたものに息を呑む。

「今度はゆっくり、感じてる顔見せて」

雄性の滲んだ表情を見上げ、どくどくと鼓膜の中で血潮が脈打つのを感じながら、愛しい夫を求めるように遥は両手を伸ばした。腕に絡まる逞しい背中。吸い付いた入口は、まるでそうするのが当然と言わんばかりにすんなりと熱を呑み込んでいく。覆い被さったまま、ゆるゆると旦那は動き始める。激しさはないが、腰を使って浅く深く入り込まれると思わず両脚まで絡めたくなってしまう。

「っん……、遥、かわいい。愛してる」

「ん、ぅ……っ」

不意に下唇を食まれ、ぺろりと表面を撫でた舌が口内へ侵入する。ちろちろと舌先だけをつつき合うようなかわいらしい口づけだ。ゆっくり、と旦那が言ったのはこちらに負担をかけないためだろうが、その穏やかな抽送に、先程まで熱を燻らせていた腹の奥がずくずくと疼いた。もっともっととねだるが如く、ひっきりなしに湊を締め付けてしまう場所が憎い。彼も気づいているのだろう、耳元に色を含んだ笑みが落とされた。

「えっちー。遥のここは待ちきれないんだ?」

「ちがっ…」

あまりの羞恥に片腕で顔を隠すと、シーツに散った髪を柔らかく梳かれる。

「冗談だって。待ちきれないのは俺も同じだからさ。…ね、強くしていい?」

「っぁ!」

いきり立った熱塊が蕾を割り裂き、深くめり込んでくる。びくんと華奢な体躯を震わせた遥は、旦那をより深く受け止められるよう、開いた脚をおずおずと広げた。柔軟性の乏しい体ではろくに開かなかったが、旦那の興奮を煽るには充分な仕草だったようで。

「…今日は、ずいぶん積極的だね」

「ひあぁっ」

手前の辺りで戯れていたものを奥までひと息で埋められ、遥は背を仰け反らせた。互いに分泌したあれこれが卑猥に絡み合う音がする。きゅう、と蕩けた内壁がいやらしくまとわりつけば、太腿をがっしりと固定したまま熱を反復させられた。熟れた内部が勝手にひくつき始め、下腹部――そこに存在しないはずの器官がぶるぶると歓喜に震えた。

「あー、かわいいっ…」

「ぁっ、はあぁ、やっ…だめ、んぁっ…!」

抱えられた太腿をぐいと持ち上げられ、浮き上がった尻に合わせて上から腰を打ち込まれる。遥の腰が落ちないよう自らの下肢で支えながら、肌がぶつかる程に激しく叩き付けられた。

「やぁあっ、や……これっ、あ、ぁっあ…!」

体を曲げているため、ろくな逃げ場もないまま何度も獣よろしく貫かれ、遥は髪を振り乱して甘い声を溢した。欲しがるように先端の丸みへ奥の壁がちゅっと吸い付くと、旦那も快楽を耐えようときつく奥歯を噛み締める。

「遥のここ…、全然離してくれないんだけど…っ」

「ばっ……! や、ぅあ……っ、それ、やだぁ……っ!」

奥まった場所で内壁を捏ねるように窄まりをつつかれ、両脚をばたつかせた遥が悲鳴じみた声で叫ぶ。なにぶんデリケートな場所だけに、痛い?と旦那は優しく尋ねる。

「っ、ぃ、たくは、なぃ……っ」

「じゃあ、していいね?」

情欲の滲んだ台詞に、咥えた縁がひくりと戦慄いたのも束の間。問いかける間だけ僅かに後退していたものが、固く引き絞られたそこをぐりぐりと抉り開けてくる。

「は、あっ、やぁ……!」

「ちゃんと思い出して…?ここで、何回も気持ちよくなったこと。ここ、ほら…やらしいお口に咥え込んだまま中出しされて、遥のかわいい遥にも触ってないのに、いっぱいイっちゃったことあったよね?…あは、かわいい。中、きゅっきゅって反応してる」

「ひっ、やだあ……っ」

覆い被さられ、耳元で淫らな言葉を囁かれながら深く交わると、自らの痴態を暴かれる羞恥に否が応でも体が反応してしまう。生理的なものも相まってぽろぽろと涙を落とせば、そっと雫を舐め取られてどきりと心臓が跳ねた。

「苛めてるわけじゃないよ。俺のお嫁さんはえっちでかわいくてたまらないって話」

「っん、く…ぅう…っ」

「ほら…すぐそうやって脚まで絡めてくるんだもん。搾り取る気満々だろ」

貫かれた隘路の奥から入口まで一直線に快感が走り、咥えたものを意図せずぎちぎちと締め付ける。その刺激に湊も端正な顔を僅かに歪ませ、妖しく笑って囁いた。

「今夜は離してあげないから」

右手と湊の左手が指を絡めて繋がれると、中指と薬指の間に金属が触れた。普段は冷たいそれも、溢れる想いと共に、今では指の熱をありありと伝えている。
不意に、胸が苦しくなった。

「……っと」

「うん?」

震える声を聞くためにゆっくりと半身を屈ませた夫の、汗ばんだ額を逆の手で撫でる。
いい男だ。浮かれた脳味噌で、本当にそう思う。
離してやれないのは、こちらも同じだ。

「ずっと……ここに、いろ」

辿々しい言葉の中に、三年分のありったけを込めて。譫言のように呟いた、嫁からのあまりにも素直な呪詛に。
湊は軽く瞠目し、下手をすれば泣き出しそうな笑顔で、うんと嬉しそうに頷いた。


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