重力に任せて、慎ましく濡れた蕾を押し広げた瞬間。もうずっと我慢してきたのか、遥は限界に達してしまった。といっても中心には触ってないから、ちゃんと吐き出すことができずにたらたらと申し訳程度の蜜を溢すだけ。絶頂の余韻で小刻みに痙攣する体を、背後から優しく抱き寄せた。

「イっちゃったの?かわいかったよ」

「は………っ、はぁ…」

「それよりほら、わかる?ここ」

遥のぺたんこな下腹部をすりすりと撫でて、ちょっと低めの声で尋ねてみる。耳元に唇を寄せれば、知らないっ、とぱっと俯いてしまう。知らないなら教えてあげなきゃな。

「さっきよりも奥まで咥えてくれてる」

「ひ……やっ、うごくな…!」

ぐに、と奥の奥を捏ねる動きに、ウエストを抱き込んでいる俺の腕を遥は慌てて掴む。達したばかりでつらい上に、すがるところがなくて不安らしい。緊張でぎちぎちと食い締めるそこを緩めようと、胸の下を軽く押して体を寄り掛からせた。

「体重かけていいよ。そんな急に動かないから」

正直に言うとさっきのきっつい締め付けで俺もかなり余裕を削られてるんだけど、ここで無理させるわけにはいかない。
呼吸を整えながら、遥はほっとした様子で体を預けてくれた。お腹を抱いていた両手をそっと腰へ移す。

「ん、ぁ……っ」

軽く自分の腰を揺すって、抜かないままとんとんと奥深くを叩く。付き合い始めた頃はよくやだやだ痛いって泣かれて、どこまでなら痛くないか、正常位で調整しながら恐る恐る挿入してた。こういう体位だと否が応でも奥まで入っちゃうからね。だからこそ、今はそれでいいんだけど。

「嬉しいな」

「な、にがっ……ぁうっ」

「遥の体が、ちゃんと俺を受け入れてくれてるのが」

「ふざけ……っぁ、んんっ」

「中も外も、あったかくて気持ちいい」

抱き締めた肌からじんわりと伝わる温もり。いつもは俺があげてるほうだよね。湯たんぽ代わりに一緒に寝たりするけど、遥もこんなに気持ちいいのかな。きゅっきゅっと絡んでくる粘膜は体温よりずっと熱い。

「少し馴れてきた?」

「ふ、ぁっ……、なれ、るか…っ…」

ゆるゆると腰を突き入れながら、乗せた体が次第に物足りなさを訴えるようにぎこちなく揺れるのを感じる。そろそろ優しくしなくても大丈夫かな。汗ばんだ首筋に歯を立てて吸い上げると、俺のものもぎゅっと中で吸着される。あ、あ、とすぐそばで零れる嬌声にも甘みが増す。遥の鉄の理性でさえ、こんなふうに溶かされていくんだから。もう、思う存分欲しがってもいいよね。

「んあぁっ」

「っは……、あれ、柔らかい…?」

太腿を開かせて後ろから抱えると、半ばまで抜け出たものを一気に突き刺した。遥は体が固いから、いつもならちょっと開脚させただけで痛いって言うのに。もしやマッサージの効果か、とついにやけてしまう。これからはどうにか言い繕って、セックス共々習慣にしてしまおう。それがいい。

「ぁ、や……ぁあっ、いき、なり…っ」

「だから、最初は優しくしただろ?…ん、ここも…」

串刺しのまま深く沈み込ませて、腰にあった両手で胸を探る。そりゃ柔らかいわけないけど、やわやわと揉むようにするとそれなりに楽しい。あんまりやりすぎると『女のほうがいいのか』って泣いちゃうからほどほどに、ね。それにしたって、ここはピンクでかわいいと思うけど。

「っひ……ぁ、さわ、な……んぁっ」

「やだ。触りたい」

指先が掠めただけで尖るそこをぷにぷにと押す。指の腹を押し返してくるのがかわいくて、より強い力で潰すように擦って。そうやって弄る間も腰を使ってあげると、太い杭を呑み込んだ場所が熱でぐずぐずに蕩け出す。揺すった衝撃で遥の中心が震える度に、さっき吐き出し切れなかった蜜がたらりとお腹を汚した。

「…ここ、熱い?」

濡れた腹を撫でながら、意地悪く奥の窄まりをノックする。びくっと跳ねた遥の頬に口づけると、言わなくてもわかるだろと息も絶え絶えに呟かれた。

「俺も熱いよ。遥があっためてくれたから」

腹の奥がかっと燃えるように熱くて仕方ない。今夜は特別冷えるそうだから、いつまでも二人燻ったままでいよう。
噛みつくような口づけを交わして、またひとつ、体温を分かち合った。



「わー。やっぱ積もったか」

凍りついた窓をぎりぎりと開ければ、外に広がる一面の白。遠くで子供たちの笑い声が聞こえてくる。見事なホワイトクリスマス。これははしゃいじゃうよな。

「寒い。閉めろ…」

「はいはい」

ベッドに腰掛けた恋人が、毛布を手繰り寄せつつ苦言を放つ。白い息をそっと吐いて、いくらか滑りがスムーズになった窓を閉じた。遥は早くも、サイドボードに準備した朝食に手を伸ばしている。これからリビングを暖めるのも時間がかかるし、遥はろくに動けないだろうと思って、俺の部屋で軽く食べることにしたんだ。
ふーふーとコーンクリームスープを冷ます小さな口。昨夜はあれに何度触れたかわからない。先に疲れてしまった遥へさらに侵入しようとしたらもう無理と泣きつかれて、でも俺をそのままにはしておけない優しさからか、あのかわいいお口でいろいろしてくれたんだけど――いや、だめだ。早くも朝食じゃないものが食べたくなってきた。

「?食べないのか」

「た、食べる食べる!」

いそいそと隣に腰を下ろして、温かいスープを口にする。焦ることはない。なんたって、本当のクリスマスは今日なんだからな。


***
なんとか終わりました。クリスマス書こうと思い立ったのが一週間前で、実働はクリスマス前四日で…到底間に合わないとはわかってたけどどうにか締められてよかった。読了ありがとうございました。








「………ん…」

ひやりと感じた肌寒さに、ふ、と遥は瞼を持ち上げる。隣から気持ちよさげな寝息が聞こえ、無意識にそちらへ頭をぐりぐりと押し付ける。どうやら寝相の悪さで毛布の一部が捲れてしまったようだ。行儀悪く足先で直していると、旋毛にこつんと何かがぶつかる。面倒と思いつつも肘をついて体を起こせば、早朝の薄靄の中にぽつんと置かれた黄色の包み。クリスマスツリーの模様が描かれたそれを持ち上げれば、裏側でくしゃりと紙の音が鳴る。二つ折りの色紙を引っ張り出し、眠い目を擦りながら読んだ。

『遥くんへ
いい子にしていたのに、ずっと来られなくてごめんね。寂しい思いをさせてしまったから、十代最後のクリスマスを迎える今日、君にプレゼントを贈ります。
どうかこれからも、そのままの遥くんでいて下さい。君のままの君が大好きです。
サンタより』

「………」

がさがさ、とわざと音を立てて包みを探る。中から出てきたのは新しい手袋だった。少し前に失くしてから、買い直すのも手間でずっとポケットに突っ込んでいたのだ。試しに片手を滑り込ませると、もこもこの生地がそっと熱を迎えてくれた。もう一度、ゆっくりと手紙に目を通す。

(字の汚いサンタだ)

ふ、と人知れず小さく笑って、手袋を揃えて枕元に置く。

いつも思う。こいつのこういうところは悪くない。

ベッドに再び潜ってから、熱源にそっと寄り添い――控えめに腕を回す。共に朝を迎えるべく、遥は静かに目を閉じた。

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