「きつい…かな。大丈夫か?」 「ん、ふ……あっ、ぁんっ」 指を増やしてそこを拡げると、とある箇所を掠めたらしい。柔らかくなってきた内部を指で探る。ここに入れたらどんなに気持ちいいことか。昂る下肢は痛むばかりだ。増やした指がうまく滑らないのがもどかしいのか、遥もゆるゆると腰を動かして受け入れようとする。それはそれで目に毒なんだけど、とりあえずは。 「焦るなよ。もう少しほぐしてからにするから」 体を繋いだ記憶も薄れかかってるっていうのに、性急に開かせたところで負担は目に見えてる。中心を緩く扱いてやりながら、根気よく指を抜き差ししていたら。 「わっ……ちょ、なに…」 不意に感じた下肢への刺激に、驚いて背を丸める。白い手のひらがさわさわとカーゴパンツの上を往復しているのを見てまたびっくりした。別にからかったわけじゃないんだけど、さっき自慰をさせた仕返しなのかこれは。とんだご褒美だと目の前の唇に食らいついたら、ぐしゃりと生地ごとわし掴まれた。 「いだっ…痛いって!」 こんなこといつもならするわけないし、やったとしても恥ずかしそうに手を伸ばしてくる遥が。 ちょっと怒ってた。え、俺何かした? 「まだ、許してなんか…ない」 俺を上からどかして、自分もやっとのことで体を起こして。どん、と俺を壁際に追い詰める。どうした、目が据わってるぞ。もしかして、あまりの熱さにおかしくなってしまったんじゃ。ベルトを乱暴に外し、ジッパーを下げる手つきはむちゃくちゃだった。 「ちょっ、待てって!遥、落ち着いて……っく…」 「っん……」 俺の下肢を跨いで、ひたりと押し当てられる濡れた場所。たまらず声が出る。はぁはぁと遥が息を乱しながら馴染ませるように擦ると、もう十分育ったと思っていたものがまた質量を増す。馬鹿、余計に入れにくくなったじゃないか。 「だめだって、まだ……ふ…っ」 「ぁ、ん……っ!」 狭い入り口をこじ開けた感覚に目が眩む。張り出した先端が熱い襞に呑み込まれていく。きつくてたまらなくて、でも同じく痛みを伴っている遥の心配なんてする余裕もない。俺を求めて離してくれないここを、意地でも征服したいって気持ちしかなくて。 「はぁ、ごめ……っ」 「!や、ぁあっ……」 揺らめく腰をがっちりと掴んで、無理矢理重力を加える。快感と恐怖に逃げ惑う体を抱き締め、ゆっくりと欲望を捩じ込んだ。しがみついている頼りない体から、あ、あ、と熱に浮かされた声が聞こえる。 「っあ、まっ……て、や――っ!」 「え……、く…ぅっ!」 太腿に柔らかい臀部がぴたりと乗った瞬間、きつく中を締め付けられた。思いもよらない刺激に、俺は抗う術もなく絡み付く粘膜へ熱を放つ。自分の腹部が濡れていると知ったのはその後だ。 「ん……遥、イった…?」 汗ばむ体を擦り付けたまま、遥は小刻みに震えている。勢いのなくなった中心からはぽたぽたと残滓がこぼれ、結合部を静かに潤す。 「っ…まえが、そんな……遠慮ばかり、する…から……」 遠慮だって。こっちは優しくしたいと思って、体を気遣いながらほぐしてたのに。 むう、と俺は軽く拗ねたけど、そういう俺のつまらない見栄を吹っ飛ばしてくれるのは嬉しかった。そうだよな、わかってるよな。遥がたまらなく欲しいって馬鹿みたいにがっついてるほうが俺らしいし、遥も安心するんだな。 「ありがと。……でも、無理はするなよ。体は大事なんだから」 ただでさえ受け入れる側の負担が大きいのに、がつがつ突かれたら遥だって壊れるだろ。気持ちよくはなりたいけど、気持ちよくなってくれたほうが俺もいい。 「っあ……!」 あれだけご無沙汰だったんだ、一回達したくらいじゃ疲れるわけもない。硬度を易々と取り戻したそれで、ぐずぐずになっている内部を探る。柔らかいお尻を撫でて、その隙間に凶暴なものを突き入れて。遥も俺にぎゅっと抱きつく。ああ、気持ちがいい。 「…遠慮、しなくていいんだよな?」 「ひ、ぁ……っ、待っ……!」 遥の腰を上下に、前後に揺さぶって貫く。さっきまでは本当にきつかったけど、俺が出したもので滑りは良くなっている。これなら遥も純粋に快感だけを受けられるはずだ。芯を持った程度だった遥の中心も、俺の腹に擦れて頭をもたげる。 「んん、ぁっ、ぅあ……っ」 「ごめんな…。もう、抑え効かない、かも…」 両手で双丘を太腿に打ち付けて、中をぐちゃぐちゃに掻き回す。こんなに奥まで入れちゃって大丈夫かなとか、考えなかったわけじゃない。でも俺をきゅうきゅうともてなす熱の前じゃそんなことは一瞬で消え去って、一番深いところに植え付けたくてたまらなくなった。 「っ、悪い……やっぱ、無理…」 「っん!」 壁から離れて、湿り気のあるシーツに遥の背中を押し付ける。密着してる体位も好きだけど、しっかり動くならこっちのほうがいい。 「遥……、っ…」 「や、んぅ……っ!」 太腿を割り開いて、体を強引に押し進ませる。抜き出すたびに零れた白濁が俺を濡らして、その卑猥さに頭がくらくらする。奔放に動く腰はもう止めようがない。濡れたり乾いたり、厭らしい映像みたいな音がリアルに聴こえてくる。汗の粒が遥の太腿に落ちて、そういえば、と存在に気づいた。 「あ…、ここも、触ってやったほうがいいな」 「!さ、わるな……ぁうっ」 あんまり後ろだけでイかせるときついだろうから、すっかり反応した中心も優しく扱いてみる。遥は即座に拒否したけど、たぶん刺激が強すぎるからやめろってことなんだろう。気持ちがいいなら構わない。必然的に締め付けも強まるし、こっちもどんどん煽られるけど。 恍惚をたたえた表情。その中の甘そうな唇が、今し方俺を咎めて、叱って、絆して。遥は、知らないんだろうな。俺が――。 「っ…遥には、まいったな…。はは……、俺、勝てないや」 「?な、に……んん…っ」 「ううん…何でもない。遥を好きになって…、よかったってこと…。ん…っ」 「っあ!や、やだ………ぁ、あ―――っ!」 絡まる隘路を掻き分けて、最奥に思い切り熱を注いだ。艶めく唇からあられもない嬌声を溢れさせて、遥もびくびくと身を震わせながら絶頂を駆け上がる。存分に出したはずの花芯が再び絞られる気配に、俺もたまらず華奢な体を抱き締めた。余韻にひくつく内部から中心をゆっくりと引き抜けば、奥に放ったものが振動で少しずつ零れてくる。もう一度蓋をしてやろうか、なんて不埒な気持ちを今度こそ抑え込んで、とろけた顔に口づけた。ちゅ、ちゅ、と触れるだけの軽いキスを何度もするうちに、気持ちも落ち着いてきたのか俺の背中へそっと腕が回る。いろんなものでべたべたの体をくっつけ合ってるのに、込み上げてくるのは不快感どころかふわふわとした幸せ。不意に、茶色く溶けた瞳がすっと細められた。 「……あつい」 「ん…?どこが?」 「…そういうこと、言うな」 ぷい、と拗ねた頬もまだ火照っている。水分でおとなしくなった前髪を掻き上げて、ごめん、と俺はそっと笑った。 ↑main ×
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