「んぁっ、は…あ…!」 力の入らない体はすぐにでも湊のものを呑み込んでしまいそうで、遥は床のタイルに着いた両脚を懸命に突っ張る。見かねた湊もしっかりと腰を掴み、ゆっくりと入り込めるように誘導してくれた。 「んっ…あ、ぁ…っ」 熱いものをぴっちりと覆い尽くす感覚に、抑えきれない声がこぼれる。疼く内壁を奥深くまで埋められて、あまりの快感に何も考えられなくなっていく。 しかも、湊の上にぺたんと座ってしまうと床から足が離れてしまい、所在なさげに宙を迷うことになる。場所も相まって、不安定なこの体位が遥は落ち着かないようだ。 「や…足、つかな…」 「大丈夫。ちゃんと抱いててあげるから」 眉をきゅっと寄せた遥を抱きしめ、湊は優しく囁いた。 「どうせ激しくしたら声出ちゃうんだし、ゆっくり気持ちよくなったほうがいいだろ?」 「あ、や…っ」 繋がったところをそっと揺らされ、遥は慌てて湊にしがみつく。唇を噛みしめると同時に、再び緩い律動が襲ってきた。 「ふぅっ、ん…っ、く…」 とろとろに溶けた内部を、熱い楔で暴かれる。その度にぎゅっと湊を締めつけてしまい、甘い吐息を漏らす。湊もいつもより欲情しているのか、圧迫感が大きい。抜け出ては入り込むを繰り返すほど、それは熱となって遥を責め立てた。 「気持ちいい?」 意地の悪い問いかけには答えない。今口を開いたら、我慢していた声を上げてしまいそうだ。ふるふると弱々しく首を振った遥に微笑み、湊は両手を腰に滑らせた。 「ここは正直なのにね」 「んあぁっ」 尻の丸みを揉みながら狭間を割り開き、湊は抜き出した楔で深々と貫いてやる。抑えていた声とともに、遥の瞳からはぽろりと生理的な涙が落ちた。先程から高ぶっていた遥のものは湊の腹に擦れ、僅かな快感を拾っては蜜をこぼしている。顔を真っ赤に染め、遥は手の甲を唇に押しつけた。 「敏感だね。今日は特に、かな」 「んっ、んく…っ」 張り詰めたものをぬるりと手で撫でられて、遥はびくびくと体を跳ねさせる。と、その時。 『すいませぇーん、はいってますかー?』 ノック音の後、子供のあどけない声がドアの向こうから聞こえてきた。遥はびくりと体をこわばらせる。湊はくすっと笑って口を開いた。 「はーい、入ってますよー」 「っんん!」 まるで保父さんのように返事をするや否や、遥の腰を掴んで揺さぶってくる。何とか声はこらえたものの、弱いところをぐちゃぐちゃに掻き回されて頭が真っ白になった。子供は満足そうな笑い声を上げている。 『きゃははっ、といれみたいー!』 『こらっ。だめだろう、悪戯なんかして』 すぐ後に耳にしたのは子供の父親だろうか。はーい、と子供はつまらなそうに返事を寄越した。 『もしもし、すみません。息子がご迷惑をかけまして』 「いえいえ、お気になさらず」 父親の謝罪へ陽気に返答しつつ、湊は十分に育った自らのもので中を突き上げていく。健気に絡みついてくるのがたまらない。 しかし。ふと顔を上げ、湊は目をみはった。 「ん、んんぅ…っ」 外部に声が漏れないようにと、遥は唇に手をあててきつく目をつむっている。湊の意地悪に屈してなるものかと、必死に理性を留めるその表情がひどく妖艶だ。熱を受け入れたそこは、欲に忠実なままなのに。 「…遥、かわいい」 「んっ! くぅ…っんん…!」 今までの穏やかさをかなぐり捨て、湊はずぷずぷと己を沈めていく。抜くなと言わんばかりに遥のそこが締め付けてくるので、湊もこっそりと吐息をこぼした。 「バレちゃうかもって興奮したの? …中、びくびくしてるよ」 「ふっ…あ、いうなっ…」 恥ずかしい言葉でいちいち実況されてはかなわない。第一、自分の体がどれだけ貪欲かなんて嫌というほどわかっているのだ。 「じゃあ、おねだりかな。中にいっぱいちょうだいってこと?」 「そ、な…っ、ちがっ…!」 鼓膜にいやらしく吹き込まれ、みっちりと埋め尽くされた内部がさらに反応してしまう。小刻みに震える肢体を抱き寄せ、湊は満足げに笑みを浮かべた。 「相変わらず言葉責めに弱いな。…ちょっと激しくするから、噛みついてて? 爪立ててもいいから」 「ひっ、やぁ……!」 宣言通り激しく体を揺すられ、思わず湊の背中に爪を立てる。申し訳ないとは思いつつも、こうしなければ堪えられないのだから仕方がない。 「も、やだ…っ、でるっ」 耳元で限界を囁けば、いいよ、と湊は背筋を伸ばしてキスしてくれた。 「俺もだから」 「んんっ、あぁ…!」 ぐっと奥を突かれて、浮かんでいた涙の粒がゆっくりと落ちる。こみ上げる絶頂感を必死で呑み込み、中に放たれる熱にびくびくと全身を震わせた。 「う……ん?」 「あ、目ぇ覚めたか?」 ぱたぱたとうちわで風を送っていた湊が、優しく前髪を撫でてきた。小さく頷いて、遥は頭を左右に向ける。 あの後。諸々の運動で疲弊していた体に鞭打って着替えを済ませ、遥は施設の休憩所の畳にすぐさま寝転んだ。湊は座布団を敷き直したり飲み物を買ってきたりと世話を焼いてくれたが、そんなことに構う余裕もなく寝入ってしまったのだ。水の中ではしゃぐのはみな同じらしく、他の利用客もそうやって寛いでいたので恥はなかった。 あれから二時間ほど経ったようで、併設のホテルに泊まる客以外はほぼ帰ってしまったらしい。遥ははっとして起き上がった。 「おい。ルシたちは…」 「ん、ああ。遥が疲れて眠っちゃったから先に帰ってて、って言っといたよ」 湊の答えに、ほっとしたような気まずいような、複雑な表情で遥は首を振る。 翼やかりんは納得してくれただろうが、他の二人はなんとなく感づいていそうで怖い。と思うのは考えすぎだろうか。 「もう少し休んだら出ような。あ、ついでにこの辺で夕飯も食べていこうよ。店探すから」 そう言ってスマホを操作し始めた湊はどことなく楽しそうで、お前のせいでこんなことに、と文句を言いかけた遥もタイミングを逸してしまう。 (まぁ、いいか) 少し不本意な形ではあるが、目一杯体を動かしたおかげか、昼食もたくさん食べたのにすっかり腹が減っている。夏バテはかなり改善されたようだ。 「んー、イタリアンとか重い?」 「…別にいい」 むしろ素麺よりはそちらのほうが食べたい。遥自身、驚きつつもそう返すと、湊も嬉しそうに笑った。 「じゃあ、夕方からのデートしよっか」 「大きな声を出すな」 「あっ、ごめんごめん」 横で座布団を運んでいた老人に怪訝な顔をされ、湊は笑みを浮かべてごまかす。 「よっし、ご飯食べに行こっと」 「何時に帰る気だ」 忘れていたがここは隣町だ。交通機関を使わないとアパートには帰れないため、時間は気にしないといけない。するとひどく楽観的な答を返された。 「いいんじゃない、いつでも。なんならその辺のホテルに泊まっちゃえばいいんだし」 「絶対に帰る」 また予定外の運動を組み込まれてはたまらない。遥は眉間に皺を寄せて断言した。 *** 終わったつもりで終わってませんでした、すみません。この後二人はデートして結局遥が疲れたので(普通の)ホテル行きになりました(笑) ↑main ×
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