「…触られたくなかった、わけじゃない…」

「え?」

泣きじゃくりながらも、遥は拙い言葉で必死に伝えようとする。テレビに感化されたこと、焦らしたこと、自分もつらかったこと。唖然とする湊に、遥は小さな声を漏らした。

「むっ…夢中に、させたかっ……」

「…遥の馬鹿」

呆れたような声音が耳元で聞こえ、じわりと涙が滲む。けれどすぐに抱きしめてきた腕は優しく、久々の温もりに胸が熱くなった。

「焦らされた気なんてしなかったよ。こっちは本気で拒まれたと思ってたんだからな」

「……ご、めん…」

普段は強情でなかなか謝らない遥も、さすがに今回はこたえたようだ。人を試すなんて、罰が当たっても仕方ないと遥自身そう思う。もし自分が同じことをされたら、湊より先に自棄になっていたに違いない。
反省しきった様子の遥に、湊もそれ以上責めることはなかった。ぽんぽんと頭を撫で、泣かなくていいよとなだめてくれる。

「もう怒ってないから。な?」

それでもぐすぐすと涙をこぼす遥に、湊は冗談混じりに笑ってみせる。

「だいたいさ、俺はとっくの昔から遥に夢中だって。でなきゃ、こんなにしつこくえっちに誘うわけないじゃん。今更だよ」

甘い台詞を聞きながら背中を撫でられているうちに、だんだんと気持ちも落ち着いてくる。それを見計らって、ひとつ確認したいんだけど、と湊が顔を覗き込んできた。

「遥、これからも俺とえっちしたいと思ってる?」

「!」

いつも以上に直球な質問だ。そんなわけない、と癖で出かかった言葉を呑み込み、遥は困ったように湊を見つめる。湊は笑いながら首を横に振った。

「だめだよ。大事なことなんだから、これ焦らすのはなしな」

つまり曖昧な返答も許さないということだ。散々湊に迷惑をかけたのだから、きちんと答えるべきなのは遥もわかっているのだが。

「し…した……ぃ…」

「聞こえない」

意趣返しとばかりに、湊はわざと知らんふりをしてしまう。皺ができるほど湊の服をきつく握りしめ、遥は耳元まで唇を近づけた。

「しっ……したい…っ」

思ったより大きな声が出てしまい、遥は耳まで真っ赤なる。くすくすとひとしきり笑った湊は、愛おしげにその体を抱き寄せた。

「よかった」

「うぅ……」

羞恥のあまり、遥は湊の肩に頬をくっつけて顔を見られないようにする。その心境を知ってか知らずか──おそらく前者だが、湊は低い声で囁いてきた。

「仲直りに、キスがしたいな」

(絶対にわざとだろ…)

こっちは恥ずかしくてたまらないというのに、口づけをねだってくるなんて。もうどうにでもなれと、遥は自ら唇を押しつけた。

「ん……」

珍しく大胆な行動に、湊は驚きつつも微笑む。きっと遥なりの罪滅ぼしなのだろう。しっかりと受け取ってから、遥の後頭部を押さえて主導権を握り返す。舌で唇の合わせをなぞれば、遥は恐る恐る隙間を作ってくれた。

「んぅ、んっ……ふ…」

歯列を割って、遠慮がちな遥の舌をするりと絡ませる。くちゅりと水音が聞こえて恥ずかしいのか、遥はどうにか湊の舌から逃れようとする。それを追いかけ、じっくりと愛撫してから次に口内を探る。前々から知る弱いポイントを舌で撫でれば、遥がふるふると小刻みに体を震わせた。

「ん、んん…っ…」

口の中も敏感な遥としては、深いキスも愛撫と同じくらい感じてしまう。口腔を犯しながら体のラインをたどっていくと、あっさりと遥の膝が折れた。

「あっ、や……っ」

それを支えられた際、股の間へぐいっと脚を入れられれば、湊の太腿に中心が押される。既に高ぶっているそこを悪戯に刺激され、遥はびくびくと腰を揺らした。

「久しぶりのキス、気持ちよかった?」

「っふ……」

漏れる声を噛み締めながら、遥がこくりと頷く。いつもより素直な反応に、ふっと湊は頬を緩ませた。

「ベッド、行こっか」



火照る体がシーツに沈み、そこへ湊が覆い被さってくる。高鳴る心臓を持て余していると、パジャマのボタンを外しながら、湊が悪戯っぽく囁いた。

「今度は、遥にいっぱい俺のこと欲しがってもらうから。覚悟してな」

意味を理解する前に口づけられ、思考がふつりと途切れる。なんだかんだ言っても禁欲で飢えていたのは遥も同じらしく、キスが降ると自分から舌を絡めていく。その間に上半身へ湊の手が滑り、肌を堪能するように動いた。

「ん…っ、は……んんっ」

まだキスをしただけなのに、舌を吸われた刺激がダイレクトに腰に響く。中心が徐々に張りつめていくのを感じ、遥はもどかしそうに膝を擦り合わせた。

「っん……だめだよ。今日はお返しに、たっぷり焦らしてあげるから」

「あ……っ」

ボトム越しにそこを撫でられ、僅かに腰が浮く。しかしそれきりで、湊はさわさわと胸を探ってきた。

「ここもね。ゆっくり可愛がってあげないと」

「ん、ふ……っ」

淡い色の乳首を、指先がそっとつつく。だが今の遥には微弱な刺激さえもが甘い快感にすり替わり、もっと強くと望まずにはいられない。

「やっ…ちゃんと……っ」

涙声で懇願したものの、湊は遥の額に口づけただけだった。

「だめ。じきに気持ちよくなるから、我慢して」

「ふぁ……っ」

反対側の乳首にちゅっと唇が落ち、震えたそこが色を変える。赤く尖った乳首を舌でいじられるが、偶然触れたような刺激に、じんわりとした熱が中心へ集まっていく。

「ぅあっ、あ……や…っ」

唾液に濡れたそこが、外気でひんやりすることさえ感じてしまいそうになる。もどかしい快感に、揺れた茶髪がぱさぱさと音を立てた。

「も……はや、く…っ」

「早く、何? どういうふうに触ってほしいの?」

やはり騙したことを根に持っているのか、今日の湊は意地が悪い。わざと難題をふっかけ、遥の返答を楽しんでいるのだ。

「…ゆび、で…っ」

「うん」

「うぅ……」

「なぁに?」

「っ……は、はさんで…ぁんっ」

言った通りにきゅっと指の間で乳首を圧迫され、唇から高い声がこぼれる。それで?と、湊が優しく続きを促してきた。

「そ…なの、わかるだろ…っ」

泣き声混じりに遥がつっぱねれば、すぐに指は離れてしまう。中途半端に触れられたそこがじんじんと疼き、遥は浅く呼吸を繰り返しながら湊を見上げた。

「もう限界? 俺は三日も我慢したのに」

「ぅ……」

苦い顔をした遥に微笑み、冗談だよ、と湊は白い肌に手を這わせる。

「んっ、ぁあ…っ」

期待に膨らんだそこを指先がこね、ゆっくりと押しつぶす。もう片方は口に含まれ、何度となく舌でつつかれた。

「はっ……んん、やぁ…っ」

強めに摘まれると同時に音が立つほど吸われ、ぶるりと腰が揺れる。ぎゅっとシーツを握って耐えたが、下肢へ触れられなくとも既に絶頂感が迫っている。いつも以上に敏感な体は、どこを刺激されても素直に感じてしまう。

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