(くそ……こいつ、また薬でも盛っただろ…っ)

媚薬入りのコーヒーを飲まされ、一心不乱に湊を求めたことは記憶に新しい。しかし今日はそんなことができるわけもない。第一、それなら湊は起きて逐一自分を観察するだろう。楽しそうに。
けれど、そうとでも考えなければこの状況に納得などできない。自分から湊の着衣を乱して愛撫し、あまつさえ自らも慰めているなんて。どうしようもなく悔しくて恥ずかしくて、遥はぎゅっと目をつむって口を開けた。

「ん、ん……っ」

片手で支えながら、先端をゆっくりとくわえる。それだけでびくりと質量を増した自身に、今度は舌を這わせていく。もう片方の手は、依然として自分のものをきつめに扱いていた。

「ん……、んっ」

表面を舌でなぞり、ふるりと震えた先端を再びくわえ込む。そのまま唇で締め上げるように頭を動かせば、湊の吐息が熱っぽいものに変わった。苦い滴がとろりと舌を濡らす。

「んむ……んっ…」

歯を立てないように気をつけつつ、入りきらない部分は手を使って擦る。眠っていてもしっかり感じているようで、既に遥のものと同じくらい張りつめていた。

(こんなの、嫌いなはず…なのに…)

これまでにも何度か口で奉仕したことはあるが、回を重ねるごとに興奮は増し、抵抗も弱まってきた。湊が目に見えて気持ちよくなっていることが嬉しくて、苦しくても喉奥を開いて受け入れてしまう。頭を押さえつけられ、"もっと奥まで"と湊に強要されると、ぞくぞくと腰の奥に確かな快感が響くのだ。そんなのはおかしいと思うのに、今でさえしてほしいと願ってしまう自分がいた。

「は……ん、んぐ……っ」

口を大きく開け、性器をぐっと深く呑み込む。息苦しさに涙が滲んだが、抜いてはくわえ込む、を繰り返し、唇で扱いてやる。すると湊が頭を枕に擦りつけ、苦悶の表情で快楽をこらえていた。

「っく……ぅ」

(!)

小さな呻き声に慌てて顔を上げれば、湊がしきりに目を擦っていた。その目がしっかりと自分を捉え、途端に遥は覚醒する。一種の催眠状態から我に返ったことで、ぶわっと羞恥がこみ上げてきた。

「え……? 遥…」

シーツに肘をついて体を起こした湊は、まず反応しきった自身を目にして驚き、次にそれへ手を添えている遥に驚愕した。いたたまれなくなった遥はぶんぶんと頭を振る。

「違う! これは、ただ……っ」

何をしていたかなんて湊でなくても明白にわかるだろう。けれど、これにはきちんとした理由があるのだ。だから決して疚しいものではない──と思いたい。

「──じゃあ」

「ぅあっ!」

湊は遥の腕を掴んでベッドに引き上げると、パジャマのズボン越しにつつーっと指で中心をなぞり上げる。突然の刺激に、ひくりと遥の腰が浮いた。

「なんでこんなことになってるんだ? 俺の、舐めてたんだろ? ほら、こんなに興奮して…下着、ぐっしょり濡れてる」

ゴムの部分を軽く引っ張られ、濡れそぼったそこをじっと湊に見つめられる。耳元でいやらしく責められると、押し上げられた下着がそれだけで色を変えた。

「夜這いなんて……遥はそんなえっちな子だったんだ? 」

「っく、うぅ……!」

吐息を吹き込まれながら自身の先端を円く撫でられ、ぞくんと腰の奥が震える。先程まで自分の手で追い上げていたものの、拙い愛撫では逆に焦らされてしまい、いつも以上に体が過敏になっている気がした。ぺろりと湊の舌が耳に這わされれば、恥ずかしいくらい中心が疼いてしまう。

「や……ぁっ、ちがぅ…っ。そんなんじゃ……っ」

これは湊も関わりのある深い事情故なのだと言いたいのに、愛撫とも言えない緩い刺激が体を蝕み、口からは絶え間なく甘い声が漏れる。わき腹から腰にかけてをするりと撫で、湊は小さく笑った。

「はは、凄い。ずいぶん感じやすいな」

「はぁ……っ」

ちゅっと首筋に吸いつかれ、先端にとぷりと蜜が滲む。とろとろと雫が滴るそこは小刻みに揺れ、体のどこよりも快楽を待ち望んでいた。ねぇ、と湊が意地悪な声音で囁く。

「遥って、ほんとは結構フェラ好きなんだよな? 前も、舐めながらしっかり感じてたし。嬉しそうにくわえてたな」

「な……っ、そ、なわけない! あんなの……ぜ、全然…」

湊のものなら汚いとは思わないが、できることならしたくはない。息は苦しいし顎はだるいし、と赤面した遥が言い訳を紡いでいくと、へぇ、と湊の瞳がうっすらと細くなる。

「襲ったくせにそういうこと言うんだ? ……ま、そんな無自覚遥ちゃんには、素直になれるようにたっぷりお仕置きしてあげるけどね」

「いるか! も、もう戻る……ぅっ!」

仕置きなんて冗談じゃない。急いでベッドから腰を上げようとした瞬間、湊に腕を掴まれシーツに投げ出される。

「っ、おい! …!」

猛った湊のものを眼前に突きつけられて、遥は僅かに怯む。湊はにっこりと笑みを浮かべ、遥の髪を優しく撫でた。

「俺のこれ、ちゃんと責任取ってくれるよな? 誰のせいでこんなふうになっちゃったんだっけ」

「う……」

それを言われてしまえばぐうの音も出ない。確かに、自分が馬鹿な真似をしなければ湊はゆっくり快眠できただろう。ここまで熱が高ぶってしまっては、自然にはおさまらない。遥はきゅっと眉を寄せ、ためらいがちに湊のものへ手を伸ばした。

「口も使って…そう。気持ちいいよ」

「んぅ……っ」

先程と同じく、先のほうをはむっと口に含み、舌を絡めて頭を揺する。唇の下から根元にかけてを両手で擦り立てると、じわっと苦味が広がった。

「はい、こっち向いて」

「ん、んっ!」

いやいやとかぶりを振ったのに、顎を掴まれて無理やり視線を合わせる羽目になる。口いっぱいに性器をくわえた自分は、湊の目にどんなにいやらしく映っているのだろう。はぁ、と湊は熱い吐息をこぼし、遥の後頭部に添えていた手へぐっと力を込めた。

「んむ……!」

「かわいいよ、遥。ちっちゃいお口、俺のでいっぱいにされてて。狭くてあったかくて…んっ、凄くいい…」

若干上擦った声が頭上から降ってくると、遥もずくんと腰あたりに響くものがあった。湊が気持ちよくなってくれている。それだけで、奉仕をしている側の遥も快楽に似た痺れをじんわりと感じるのだ。

「んっ! やっ、あ……!」

湊の手がパジャマのズボンに滑り、腰をさわさわと撫でてくる。驚いて口を離してしまった遥の頭を、続けて、と言うようにやんわりと押し戻した。その手は尻の丸みを揉んで堪能しつつ、狭間へ向かっていく。きゅっと閉じられた入口を濡れた指になぞられ、びくっと遥が腰を揺らした。

「せっかく遥が頑張ってくれてるんだし…こっち、かわいがってあげないとな」

「んんっ!」

きつく閉じたそこも、湊の指が存在を知らせるようにゆっくりと入り込めば、容易に内部へ導いてくれる。絡みつく粘膜は拒絶ではなく、遥の欲求に即して湊を離すまいと締めつけた。


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