徐々に湊の肌が露わになっていくにつれ、どくどくと遥の鼓動が激しさを増す。頬どころか体中がすっかり熱を持ち、緊張で呼吸さえもがたどたどしくなるほどだ。

「っ……これで、いいだろ…」

脱がせたシャツを湊の布団へ放り、目を背け気味のまま遥は言う。これからもっと恥ずかしいことをするのに今から泣きそうだなんて情けなさすぎるが、遥にとってはこの時点でいっぱいいっぱいなのだ。

「下は?」

からかうような口調で湊がボトムの生地を摘むと、遥は困ったようにきゅっと眉を寄せる。

「知るか……っ、自分で…」

「たまにはいいじゃん、ね? こういうことは二人でしなきゃ。だって…」

遥が誘ったんだからと、忘却の彼方へ送ってしまいたい数分前の事実を持ち出され、遥は悔しげに顔を歪めた。

「やればいいんだろっ」

半ば自棄になりながら、乱暴な手つきで湊のベルトを外す。どくん、とさらにうるさくなる心臓を持て余し、遥はいったん手を止めて呟いた。

「で、電気……」

「ん? ああ、消す?」

黙って頷けば、湊はおとなしく明かりを落としてくれた。視界がかなり制限されたことで少し落ち着いた遥は、ウエスト部分を緩め、下着ごとボトムを引っ張っていく。湊がちょうど腰を浮かせたので、思いのほか簡単に脱がすことができた。

(う……)

けれどやはり、暗闇の中でも裸体を直視することはできない。役目を終えてすぐにタオルケットの端を握り、湊よりいくらか斜め下に視線を落とした。

「えらいえらい。よくできました」

ご褒美にと額へキスをされ、タオルケット越しに体を抱きしめられる。ここを隔てなければ直接体温に触れることになるのだ。それはまだ、恥じらいの残る今では耐えられない。だが湊が許してくれるわけもなく、

「そろそろ…これはいらないよな?」

「あっ」

タオルケットがするりと肩を滑り落ち、遥は慌てた声を上げる。しかし近づいてきた唇がその声を封じ、ゆっくりと舌を絡めてきた。

「んっ、んん……っ」

敏感な口内に湊の舌先が触れると、ぞくりと背筋が甘く痺れる。器用に動く舌に翻弄され、小さく体を震わせた。同時に、湊の手が体全体をやんわりと撫で上げてくる。

「は……ん、んぅ……」

体の、そして心の奥からわき上がる、湊がほしいという気持ちはもう止められない。自らも深い口づけをねだり、遥は湊の首をかき抱くようにして目をつむった。
いつになく積極的な遥に少々の驚きを覚えたが、湊は笑みを深くすると遥の舌をそっと誘う。ちゅくちゅくと互いから漏れる淫靡な音で静かな部屋が満たされたのを遠くのほうで感じつつ、遥は今までの経験を思い返してキスを貪った。

「ん、ぁ……」

程なくして唇が離れ、舌を繋いでいた糸もぷつりと切れる。濡れた唇を指で拭ってやり、湊は吐息と共に囁きを落とした。

「遥、なんかエロい……」

「なっ……う、うるさ…っ」

お前なんていつもそうだろ、と心の中でも反論し、遥はぷいとそっぽを向く。自分から迫った恥ずかしさがまだ抜けていない。湊は小さく笑って、白い首筋に唇を滑らせた。

「んっ……や…」

「やなの?」

軽く湊を押しやるようにすれば、意地の悪い声と共に肌をきつく吸われる。シャツで隠すことができない、首筋の上のほうに赤く印がついたのを悟った。

「まぁ、今更やだって言われてもやめないけどさ」

「ふ…ぁ……っ」

唇が下りていき、喉元や鎖骨を甘く噛まれる。その間にも手がいやらしく体を這い、胸元の尖りを指の腹でこねてきた。

「っん……ん、ぅ…」

「かわいい。ここ、好きだろ?」

意識しないようにと思うと余計に感覚が働いてしまい、湊の指によって形を変えられるたびに腰が揺らめく。まだ柔らかかったそこは久々の刺激で簡単に立ち上がり、下肢にも快感が流れ込んでいくと、遥は脚を擦り合わせて隠そうとした。

「気持ちいいの?」

「あ……っ」

尖りを摘んだ指にきゅっと力が込められ、快感と僅かな痛みで背筋が震える。こぼれた声も十分に甘さを含んでおり、湊は空いている手をゆっくりと下げていった。

「やぁ……っ」

「恥ずかしくないから。見せて?」

閉じた両脚の隙間から手を入れようとするが、遥はいやいやとかぶりを振る。まだ少ししか触れられていないにもかかわらず、素直に反応してしまった下肢が憎い。

「なぁ、見せて。遥のかわいいとこ」

「そっ……な、言うな……っ」

恥じらいを増幅させたいのか単にからかいたいのか、湊は耳元で揶揄してくる。耳に吐息がかかるだけでも背中がびくりとしなり、体の力が抜けていく。その隙をついて、湊はゆっくりと両脚の間に手を忍ばせた。

「ぁ、あぁっ……」

頭をもたげていた芯をゆるゆると扱かれ、必死に声をこらえていた唇があっさりほどける。湊にぎゅっとしがみつけば、応えるように腰へ腕がまわった。

「んぁっ、あ……んっ、なんで……ぁっ」

「ん?」

下肢へ伸びる手を動かしつつ、湊は胸の尖りに唇を落とす。だが遥のたどたどしい言葉を耳にし、ふと顔を上げた。

「な、んで……ぁあ、んっ……すわった、まま…っ?」

いつもはベッドなりソファなり、押し倒されて事に及ぶことが多い。布団が敷いてあるのに、ただ腰を下ろしただけの姿勢というのは少し落ち着かない。んー、と湊は楽しそうに首を傾げた。

「座ってると、こんなふうにぎゅって抱き合えるから」

「っ………」

確かにそうだ。二人とも肌を露わにしているせいもあるが、直に湊の体温が伝わってくるとどきどきする。いつもより触れ合えているような気さえした。

「もし座ってるのが疲れたら、入れる時に横になればいいじゃん」

「そ、いう問題じゃっ……やぁっ」

せっかくの雰囲気も何のその、なんの恥じらいもなく言ってのける湊に、遥はちょっと泣きそうになった。何故自分ばかりがこんなに恥ずかしくなるのだろう。
だが急に中心を握り込まれて、喉から甘い声が押し出された。

「入れるまで我慢できなさそうだし、一回出しとこうか」

「ぁんっ、あ、ぁ……っ」

蜜をこぼす先端をくりくりと指先で押し込まれ、ぶるりと腰が震える。

「ほら、濡れてきた」

「んんっ、や……ぁっ」

興奮と羞恥を煽るような台詞に、絶頂感がじわじわと迫ってきた。ぬるりとした滑りを全体に塗り広げられ、水音を立てながら扱かれると頭が真っ白になりそうだ。

「あ、ぁあっ、や……だぁ…っ」

そこまでしっかり愛撫もされていないのに、湊の手で簡単に追い上げられてしまうなんて耐えられない。やめさせようと手を掴んでみるが、代わりにかぷりと乳首へ歯を立てられた。

「い、た……っ」

「その割には嬉しそうだけど」

噛まれたところを今度はくちゅくちゅと口の中で転がされ、中途半端に放っておかれた自身がひくりと揺れる。

「遥がしてほしいなら、ここでイかせてあげるよ?」

「ぁあ……!」

口に含まれたほうとは逆の突起を、湊が指で押しつぶす。遥は悔しそうに唇を噛み、湊の手をおずおずと解放した。このままだと湊の言うとおりになりかねないと思ったのだ。

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