「そ、なのっ……しらなくてもい、だろ……っ」

泣き声混じりに訴えても、湊は更に楽しそうな顔をする。プライドの高い恋人を少しずつ屈服させていくのが堪らなく嬉しいのだ。

「遥のことだから知りたいんだよ、他は何だっていいけどさ。いいの? これ、ずっと貼ったままでも」

「や……っ」

これ、とテープ越しに乳首をつつかれ、赤く尖ったそこを押し潰すようにされる。僅かに残る理性と恥じらいが口を噤ませるが、開いてしまうのは時間の問題だった。そこへ追い打ちをかけるように、湊の指が優しく乳首を転がしてくる。

「言えるよな? 俺だって、早く遥をかわいがってやりたいんだよ」

そう、これは我慢の効かない自分のためではない。どうしようもなく性欲が旺盛な湊が悪いのだ。そう思えば少しだけ気が楽になった。ようやく遥が口を開けば、湊は意地悪く笑って耳を近づける。


「ふ……ふろ、で……っ」

「お風呂? 体洗うついでに泡でぬるぬるになりながらしちゃった?」

「やめ……っ」

その時の様子を的確に言い当てられ、遥はぷるぷると首を横に振る。健全な男子なら当たり前のことだとわかっていても、そこはかとなく背徳的な行為を鮮明に思い出すのは恥ずかしい。湊は更にゆっくりと、言葉で遥を責め立ててきた。

「遥がそんなえっちな子だなんて思わなかったなぁ。いつも俺がどうやってるかとか考えてくれた?」

「やあ、もっ……きかなぃ、で……!」

性経験もろくにない遥は、湊の愛撫を真似るくらいしか術を持っていない。ここはどんなふうに触れられたか、どこに触れれば気持ちいいのか──そんなことを思いながら手を動かしていた。なかなか絶頂に達せなくてもやもやしたことも湊にはお見通しなのかもしれない。

「ここも触った?」

「はぅ……っ」

尖りきった乳首の先端を爪の先で突かれ、遥はぶんぶんとかぶりを振る。指先で持ち上げるように下から揺らしながら、湊の舌がぬるりと耳を這った。

「はっ、ぁっ……!」

「何で? こんなに感じやすいのにもったいないな。今度からは、ちゃんとここもかわいがってあげるんだぞ」

ちゅ、と耳の柔らかい部分に口づけ、湊の体が僅かに離れる。もはや理性の欠片さえ残っていない遥はとろりと溶けそうな瞳を湊に向けた。

「も、いいだろ……っ」

「ああ、そっか。早く剥がして欲しいんだ?」

すっかり我慢の効かなくなった様子の遥に苦笑し、湊は両手を胸元に伸ばす。テープの端を指先で摘み上げ、両方同時にぺりっと勢い良く剥がした。

「あっあぁ!」

遥の花芯がひくりと揺れ、先端から溢れた新たな蜜の滴が光る。湊は真っ赤に熟れた乳首をそっと撫でると、剥がしたついでに丸めたテープの残骸をそこに押し当てた。

「あっ、やっあ……あ、んっ」

凹凸の付いた球体がくりくりとランダムに転がされる。先端にちくりと引っかかったり、つるつるした表面で撫でられたりという様々な刺激に遥は体を震わせるしかない。

「気持ちいい?」

「ふうぅ……っ」

片方の乳首からテープのゴミが遠のき、遥がこぼしたものをすくった指で摘まれる。ぬるぬると滑るそれが全体に塗られ、濡れた指がそこを優しく揉みほぐした。

「痛いのと滑るの、どっちがいい?」

「は……あっ、わかんな……ぁっ」

激しい快楽に浮かされ、甘い愛撫に溶かされ。問われた質問を反芻することさえできず、ただ目の前の快感だけを追ってしまう。遥の淫らな姿を見せられて、湊の余裕も少しずつ削られていった。

「そろそろ俺も入れたくなってきたし、こっちも準備しよ?」

「あ……っ」

せっかく手に入れた快感がすっと離れてしまい、ねだるような声が遥の唇からこぼれる。湊は床に屈むと遥の手を引いてベッドから下ろし、床に膝をつくような形で遥の上半身がシーツに覆い被さるように位置を調整した。

「んぅ……っ」

「あーあ、こんなところまで濡らしてる」

遥の背中に沿って手を下ろし、軽く尻を撫でて狭間を指で探る。先程からの刺激ですっかり反応していた自身の蜜によって、そこはぬるりと滑った。濡れそぼったそこをたどれば、ひくひくと指先に吸いつこうとする。

「ほしい?」

甘く低い声で囁いてやると、こくこくと健気に頭が振られた。

「素直な遥もかわいいな」

「あっ、あぁ……っ」

一本の指をずるりと埋め込まれ、それを逃がさないようにとすぐさま粘膜が絡みつく。まだ余裕があると感じたのか、湊はゆっくりと指をもう一本差し入れた。

「はぁ、あっあ……んっ」

遥の感じる場所などとうに知り尽くした湊の指が、くぷくぷと水音を立てて動かされる。決して激しい動きでなくても、要所要所を押さえられていれば快感も膨れ上がる。遥はシーツに爪を立ててこらえるが、体とシーツの隙間に潜り込んだ指に乳首を摘まれて驚いた。

「ひゃ……っ」

「油断してた? 残念でした、同時平行だから」

くすくすと小さく笑った湊は、中を突く指の動きに合わせて乳首を揉み込んでくる。上と下の両方で与えられる刺激に、遥はがくがくと体を震わせた。

「気持ちいいならそう言ったら? それとも足りない? ここもかわいがってみようか」

「あんっ」

舌先が耳殻をなぞり、ちゅるりと中に滑り込む。時折耳たぶに吸いつかれながら中を舌でつつかれて、ぞくぞくと背筋が甘く麻痺した。

「あ、あっん、ふ……ぁっ、みみっ……やぁ……っ」

「すご……ここ、きゅうきゅう締まってる」

快感を増幅させてしまうから耳は嫌だと言ったのに、湊は更に、吐息と恥ずかしい台詞を吹き込む。ここ、と後ろの指が荒く抜き差しされた。

「い……うなっ、そんなっ……はあぁ!」

「やっぱりここがいいのかな? ま、もうどこに触ったって感じるだろうけど」

耳が嫌だと言えば乳首を弾かれ、身をよじればくわえ込んだ指で突き上げられる。様々な場所から受ける快楽はもはや行き場を失い、二度目の絶頂が訪れようとしていた。なのに。

「そろそろいいかな」

「ぁ、やぁ……っ」

三カ所からの責めを一気に無くされ、ずくずくと重たい熱が中心にわだかまる。絶頂寸前のもどかしさに、無意識に腰が揺れた。

「どうかした?」

素知らぬ顔で湊が問いかけると、遥は困ったように眉を下げて湊を見つめる。しかし湊は意地悪にもさっぱりわからない、といった表情で遥を見返した。

「ぅ……」

じわりと滲んだ涙を手の甲で乱暴に拭い、遥は体を起こして湊と対峙する。熱が凝っておかしくなりそうな自身が僅かに覗くようにだ。

「イきたい?」

少々恥じらいが残る遥の仕草に愛しさが募る。質問に対して素直に頷いた遥へ、湊はにこりと笑いかけた。

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