「はぁ……あっ、あぁ……っ」

だんだんと甘みを増してくる声に、指の動きが少し早まる。内壁を広げ、弱いところを時折擦りながらそこをほぐしていく。

「つらくないか?」

かりんはふるふると首を横に振る。痛みを我慢している表情ではないから本当のことだろう。三本目の指をじわじわと呑み込ませた。

「んん……はぁっ」

最初の時よりずっと慣れてはいるが、それでもまだ、体を重ねた回数は一桁におさまるほど。すんなりと、というわけにはいかない。

「潤滑剤か……あ」

「ほぇ……? んぁっ」

何故か指が抜かれ、凌也はさっさとベッドを下りる。力の入らない体を肘で支え、何事かと凌也を目で追った。
テーブルの朝食はすっかり冷めてしまっている。料理には目もくれず、凌也はあるものを手にして戻ってきた。

「えっ……」

絶句したかりんをよそに、凌也はボトルを逆さにして側面を押す。とろりと粘度のある液体が指先を濡らした。

「そっ、それ!」

「? 蜂蜜がどうかしたのか」

顔色ひとつ変えず、凌也はそのボトルを逆さのままかりんの下肢へ持っていく。途端にかりんは体を震わせた。

「あぁ……っ」

頭をもたげた熱の先に、たらたらと蜂蜜が落とされる。それは自身を伝い落ち、ひくひくとわななくつぼみをも濡らしていく。

「だ、だめっ……こんな……ひぁっ」

制止の声にも聞く耳を持たず、凌也はさっさと指を埋め込む。どろりとした蜂蜜は熱されたことで粘度が低くなり、ちょうどいい滑り心地を与えた。

「痛くはないだろう?」

「で、でもっ……んぅっ、は……ぁっ!」

言いたいことはとにかくたくさんある。けれど凌也の指がいたずらに性感帯を掠めてくるので、文句はあえなく甘い声に変わる。

「あっ……」

しばらくほぐされたところで指が抜かれ、代わりに熱くて質量のあるものをあてがわれる。濡れそぼったそこになじむように先端を擦り合わされて、つぼみが物欲しそうに震えるのがわかった。

「入れるぞ?」

「はぃ……んんっ!」

痛みはほとんどないが、圧迫感がぐっと体を押してくる。必死で凌也にしがみつくと、ゆっくりと楔が中に埋まっていった。

「は、ぁあ……んっ」

どくどくと脈打つ、まるで心臓を呑み込んだようなこの感覚にはいつまで経っても慣れそうにない。それでも凌也が楽に挿入できるよう、なるべく体の力を抜いていた。

「大丈夫か?」

ずっと奥まで満たされた頃、凌也が心配そうに顔を覗き込んでくる。

「だいじょうぶ、ですよ。だから……」

動いて、とはまだ言えない。代わりにぎゅっと凌也に抱きついてみると、そっと楔が抜き出された。

「は……あっ、ぁ!」

内壁を擦りあげ、奥を突かれるたびに声が漏れる。隣室の佳奈子を配慮する余裕なんてもうないのだ。

「ここか?」

「あっあぁ! やぁ、ん……っ」

快楽の深い場所をぐりっと突かれ、腰がびくびく跳ねる。凌也は不意にかりんの肩の下に手を入れ、挿入したままかりんの上体を起こした。

「ひぁんっ」

中を突くものの角度が変わり、かりんは慌てて凌也の首に両腕をかける。向き合うようにして凌也の膝に座らされ、より深くまで凌也を受け入れることになった。

「体重が軽いならこのほうが楽しいと言われた」

「な、成島さんにですか?」

「いや、小宮に」

(えええええ)

佳奈子の悪ノリに湊まで加わるとは予想外であった。絶句するかりんをよそに、凌也は緩く腰を動かす。

「はぅっ……」

さっきの体位よりも凌也を近くに感じるせいか、少しの刺激でさえ敏感に拾っている気がする。更に凌也はかりんの腰を両手で掴み、上下に優しく揺すり上げた。

「ひあぁ……っ、あっ、だ、だめ……んぁ!」

根元まで呑み込まされては引き上げられ、また深くまでくわえる。瞳には生理的な涙が浮かび、きゅうっと凌也自身に粘膜が絡みつく。凌也の熱っぽい吐息が耳元を掠めた。

「やぁ……っん、そこは、あっあ……っ!」

徐々に慣れてくると、感じる場所をずっ、ずっと楔が突き上げてくる。密着した状態だと、蜜を溢れさせた自身がエプロンの裏地に擦れて余計に恥ずかしい。

「やっ、あ……っ、あ! へんに、なっちゃ……っひぁ!」

「っ……なれよ」

普段では耳にすることのない、強引な台詞に胸が熱くなる。凌也の余裕のない表情はいつもよりずっと艶めいていて、自分を欲してくれているのだと思うと安堵がこみ上げてきた。

「せん、ぱぃ……んんっ、すき……すき、です……あっ」

溢れてくる気持ちを伝えたくて言葉を紡ぐと、くわえた楔がぐっと質量を増す。凌也もこくっと頷いた。

「ああ。俺も、好きだ……」

その言葉が、火照った体にじんわりと染み込んでいく。しかし夢見心地も束の間、主導権を取り戻すように繋がりを荒く揺さぶられた。

「このまま……出して、いいか…?」

耳元で吐息と共に囁かれ、かりんはぎゅっとしがみつく。いつもなら中に出さないよう付けているのだが、今日はそんな余裕もなかったのだろう。だからといって、今更楔を抜いてほしいとは思わない。

「はぃ……んっ、だして……っ」

べったりとねだる声はどこまでも甘い。近づく絶頂感に、ひくひくと花芯が揺らめいた。

「っ……わかった」

「ひあぁ……っ、あ、も、ぼく、もっ……」

浅いところをがつがつと穿たれ、その上凌也の片手がエプロンをめくって自身を握り込んでくる。ゆるゆると扱かれて、熱いものが体の奥から湧き上がってきた。

「だめっ……あぁ、もっ……でちゃぅ……っ、あぁあああ!」

「っ…く……」

かりんが達したと同時に後孔がきゅうきゅうと締まり、凌也もそこで熱を放つ。吐き出されたものが内壁を熱く濡らす感覚に、かりんはふるりと体を震わせた。

「んっ……あつぃ……、です。……ひゃんっ」

芯を持ち始めた中のものが再び動き出す。腰を掴まれ、さっきと同じように揺さぶられれば甘い声をこぼすしかない。

「やぁっ、も、だめ……んっ、こわれちゃ……っ」

「お前が煽るのが悪い」

「んぅっ」

文句を言おうとした口は塞がれ、突き上げの激しさに思考さえもが霧散していった。



「……怒ってるのか」

「あ、当たり前です!」

シーツやらエプロンやら体やらの後始末全てを終え、だるさ故にベッドでうずくまったかりんはぷいっと壁を向いた。

「服はぐちゃぐちゃだし……食べ物を無駄にするし……体も痛いです」

「……悪かった」

ベッドに座ることさえ許されない凌也は、床に正座してしんみりと謝る他ない。
最初はほんのいたずら程度だったのだが、かなりご無沙汰だったことに加え、かりんのかわいさに理性が吹っ飛んだことは言い訳のしようもなかった。

「でも……」

かりんの耳がほんのりと赤らんだ。

「ちょっとは……嬉しかったんです、よ…」

凌也が瞳を大きくしてうなだれた顔を上げる。かりんはごろりと寝返りを打った。その頬は朱を刷いたように真っ赤だ。

「しっ、新婚さん……みたいで」

その瞬間。

「ほぇっ!」

横になったままのかりんに、ぎゅう、と凌也が抱きついてくる。かりんは困ったようにうろうろと視線をさまよわせたが、結局は凌也の背に腕をまわしたのだった。



***
え? 誰が蜂蜜プレイしていいっつった? ねぇ凌也さん(^ω^#)
予想以上にねちっこいえっちになりました。これじゃ湊と変わらん。もっとクリーンだと思ったのに、書いてたら楽しくなってきて困った;


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