:: そのまま
2019.12.21 (Sat) 22:03

・子供の遥に会いに行く話


湊「ん……?」

湊「ここどこだ…あ、商店街…」

湊「地元か。なんで俺こんなとこに…夢か? 夢っぽいな、うん」

湊「こういうの明晰夢って言うんだっけ。せっかく意識あることだし、遥いないかなー(^q^)」

湊「にしても、夕方の商店街だけあって人多いな。遥の家まですぐだし走ってくか?」

湊「でもなんだろ、なんかどっか違うような…あれ、あの床屋って確か店閉めたんじゃ…」

湊「……! そうだ、昔の商店街だ! だって十年くらい前だぞ、床屋のじいさん亡くなったの」

湊「考えてみたらそうだよな、新しくできたカフェもおにぎり屋もないし。あのブティックのおばちゃん若いし」

湊「じゃ、俺んちに行ってみても優太はいないかもしれないのか」

湊「……ん! あれ遥じゃね? うわわ、ちっさ! 小学生!」

湊「前に晶さんに見せてもらったアルバムの通りだな。そりゃ俺の記憶を元にしてるんだから当然か」

湊「わーどうしよ、このまま話しかけても不審者だし…」

湊「おつかいに来たのかな? ランドセル背負ってないし…いや、そもそも何曜日なんだ?;」

湊「うう、話したい! 連れ去っちゃいたい!」

湊「いやいや、誘拐してどうすんだ。とりあえず警戒されないように近づいて…」

てくてく

湊「ね、君! ちょっといい?」

遥「(ビクッ」

湊「驚かせちゃった? ごめんね(しゃがんで目線合わせる)」

遥「…だれ」

湊「(声高い!) 俺は小宮湊。君、桜井遥くん?」

遥「……」

湊「俺ね、大学生なの。将来先生になりたいんだけど、今度、第四小学校に教育実習で行くことになってて。教育実習って、わかる?」

遥「わかる」

湊「手続きはもうしてあるから、生徒のみんなのこと覚えるために、顔写真とか名簿とか、先生方に見せてもらってるんだ。遥くんだよね?(この頃まだ個人情報ガバガバだし疑われないだろうな)」

遥「…うん」

湊「(まだ警戒してる;) おつかいに来たの?」

遥「…あそびに」

湊「(遊びに!?あの遥が!!)」

湊「何して遊ぶの?」

遥「………」

湊「遊びについてっちゃだめかな?」

遥「やだ」

湊「(即答……(泣)) 友達と遊ぶの?」

遥「そんなのいない…」

湊「(あ…)」

湊「(小学校の頃、見た目で嫌がらせ受けて、あんまり学校通ってなかったんだっけか)」

湊「時間ある? 遥くんとお話したいな。お腹すいてない?」

遥「べつに、へってない…(ぐきゅるる)」

湊「………」

遥「へってない!」

湊「あっちに喫茶店あるから、一緒に行かない? たまごサンドがふわふわでおいしいんだよ」

遥「たまご…」

湊「(かわいい…!) 甘いものもあるよ。チョコパフェとか、好きじゃない?」

遥「たべたことない」

湊「おいしいよ、パフェ。ジュースもあるし、おごるよ。これから実習でみんなにお世話になるからね」

遥「………」

湊「知らない人にはついてっちゃだめって教わった?」

遥「うん」

湊「そうだね、俺のことまだ知らないもんね。遥くん、おばあさんと住んでるよね?」

遥「うん」

湊「おうち、すぐでしょ? おばあさんにお話して、遥くんと遊んでいいですかって訊いてみるよ。それなら大丈夫?」

遥「……うん」

ーーー

湊「(綾さん若かったな…ていうか、夢なんだから多少強引に連れてきてもどうにかなった、だろうけどさ。現に綾さんすげーすんなり許可してくれたし)」

遥「(ちゅー)」

湊「(オレンジジュース飲んでるだけでくそかわいい…こんなんでよく誘拐されなかったな)」

遥「たまごまだ?」

湊「もうすぐ来るよ、ほら」

店員「卵サンドとナポリタンです。パフェは後ほどお持ちしますね」

湊「はい(ここの喫茶店も、ずいぶん前につぶれちゃったんだよな)」

遥「たまご…」

湊「お皿に取るね。はい」

遥「(ぱくっ)」

湊「(両手で持ってる…かわいい…)」

遥「んむ…」

湊「どう?」

遥「…おいしい」

湊「よかったね(^^)」

遥「ほんとに、ふわふわだ」

湊「うんうん、俺も前に食べてすごいなーって思ってさ(今ではレシピ完コピしたけどね)」

遥「それなに? なぽりたん…?」

湊「うん。食べてみる? くるくるして…あーん」

遥「! ……ん(口開ける)」

湊「はい、ぱくー。スパゲッティだよ」

遥「ん……おいしい。たまごのほうが、いいけど」

湊「そう? 育ち盛りなんだし、いっぱい食べてな」

遥「………」

湊「ん?」

遥「…いつから、がっこうくる?」

湊「えっ」

遥「おれ、がっこうきらいだから……ぜんぜんいってないけど、せんせいがくるなら、いこう、かな」

湊「!」

遥「おれのくらすじゃ、ないとおもうけど…」

湊「……もうすぐだよ。きっとまた会えるから、大丈夫」

遥「…ほんと?」

湊「会えるよ、絶対。俺も楽しみにしてるから、ね。ほーら、パフェきたよ。一緒に食べよ?」

ーーー

てくてく

湊「お腹いっぱいになった?」

遥「うん」

湊「帰ろっか。家まで送っていくよ」

遥「……」

湊「手、つなぐ?」

遥「て?」

ぎゅっ

湊「ちっちゃいなぁ。かわいい手」

遥「……(ぎゅう)」

湊「ね、遥くん。これから成長して大人になる途中で、つらいこと、たくさんあるけどさ。楽しいこともたくさんあるから、すねないで、曲がらないで、まっすぐ自分のまま進んでな」

遥「まっすぐ…」

湊「自分のことは、自分が一番わかってあげて。やりたくないならやらなくていいし、やりたいならどんどんやって、それでいいんだよ」

遥「…がっこういかなくても、いい?」

湊「うん。勉強が好きなら自分でやればいいし、何かやりたいことが見つかったらそのうち行きたくなるよ。子供は何も我慢なんかしなくていい」

遥「……」

湊「誰に嫌われたとしても、きっといつか、遥くんのことを遥くんよりわかってくれる人に巡り会えるから」

遥「…せんせい」

湊「ん?」

遥「せんせいが…いてくれたら、いい、のに」

湊「うん、まぁ…そうしてあげたいけどさ。俺にも大事な人がいるんだよ。……待ってるよ、またね」

〜〜〜

湊「っ!(がばっ)」

遥「(ビクッ」

湊「はー……あれ、えっ、俺昼寝してた!? 」

遥「…してた」

湊「うわ、マジじゃんもう夕方! んんー、やっぱ昼寝すると変に疲れるな。夜寝れなかったらやだなぁ」

遥「寝てるなら疲れないだろ(T_T)」

湊「なんかこう、だるくならない? うぐー体重い! 買い物がてら走ってくるか!」

遥「(T_T)」

湊「……と、その前に」

ぎゅっ

遥「!」

湊「あぁ…遥だぁ……! あー落ち着く、やっぱこの感じじゃないとな」

遥「?何言って…(- -)」

湊「『せんせい(はぁと)』もかわいかったけど。へへ、生意気にまっすぐ育ったなぁ(髪ぐしゃぐしゃ)」

遥「や、めろ! 寝ぼけるな…!」

湊「寝ぼけてませんー。これから卵買いに行くもん。明日の朝は時間あるから、ふわふわ卵サンド作ってあげる」

遥「! ふうん…」

湊「(笑)」

遥「笑うな」

湊「はーい。そのままの遥が大好きだよ」


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