:: 星に願いを
2013.07.07 (Sun) 01:33

「そんなにどうする気だ…」

「だって、ひとり一つとかそんな決まりはないもんな」

テーブルの上には無数の短冊。折り紙や色画用紙ならともかく、チラシの裏とはなんとも虚しい。まぁ所詮は遊びなのだから、湊も本気で飾る気はないようだが。

「見て見てー」

『遥がちゅーしてくれますように』
『遥が甘えてくれますように』
『遥が優しくなりますように』

「あ"ーっ!」

薄っぺらいチラシの紙はビリビリと四つに裂かれ、湊が絶叫する。

「叶いもしないような下らないことを書くな」

「うう……じゃあ遥が書けよ、ほら」

何枚かの紙をばん、とテーブルに叩きつけ、湊はため息をついて立ち上がった。

「俺、ゴミまとめてくる。明日出さなきゃだし」

本気ではなかったものの、願い事を踏みにじられたようで湊も少し落ち込んだらしい。袋を片手にリビングを出て、キッチンや各部屋のゴミを集めに行った。

「ったく……ちょっとくらいはいいじゃんか、夢見たってさ」

少々拗ねた気持ちでゴミ箱からゴミを回収し、全てまとめたところでリビングに戻る。遥の姿はなかった。

「あれ?」

しかし廊下に出てみれば、浴室のほうから水音が聞こえる。風呂に行ったようだ。

「あいつ、なんか書いたかな……」

あまり期待しないでテーブルを見たが、きっちりした字の並ぶ短冊が置いてあったことに湊は驚いた。

(いったい何を……)

拾い上げて文字を目で追う。湊はしばし呆然と短冊を見つめていたが、やがて小さく吹き出した。テーブルの隅には、さっき遥が破いた短冊がセロテープで補修されていた。

「こういうとこはほんと……素直になったよなぁ」

短冊を自室に持ち帰り、着替えを持って風呂場へ向かう。仲直りに、一緒に風呂へ入るとしよう。

『湊に嫌われませんように』

「なるわけないじゃん。こんなに好きなんだからさ」
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