:: 人間湊と淫魔遥2
2017.10.15 (Sun) 21:53

・続き


湊「落ち着いたか?」

遥「ぐす……」

湊「ひとりで心細かっただろ。もう大丈夫だからな」

遥「(地上に来てから…ずっと疲れてた気がする)」

遥「(早く大人にならないと、って…そればかりで)」

湊「とはいえ、あれだな。ひとりなのはわかるけど、ちゃんと自立はしろよ? それまではここに住んでていいから」

遥「自立…?」

湊「そう。子供じゃないんだし、アルバイトでもいいから働き口決めて、自分でやりくりしていかないと。だろ?」

遥「(人間はそうやって生きてるのか…)」

湊「もちろん、俺もサポートはするから。少しずつ頑張ろうな」

遥「(…いつまでも、ここにいるわけにはいかない)」

遥「(でも…少しの間だけ…他に堕落できそうな奴が、見つかるまでなら…)」

遥「…わかった」

湊「よしよし。じゃ、今日はとりあえず休めよ。あとで求人雑誌もらってくるから」

遥「(俺が淫魔だと知ったら、こいつは…)」

遥「(いや、知る必要なんかない。時が来たら、黙って出ていけばいい…)」

湊「そーだ、名前!俺は小宮湊。お前は?」

遥「………さくらい」

湊「下の名前は?」

遥「…………」

湊「あー…まぁ、いいや。桜井って呼んどく」

遥「(悪魔にとって、名前は…命に等しい)」

遥「(教えるわけにはいかない…から)」

〜〜〜

遥「(こんなに長く、人間界にいることになるなんて…考えもしなかった)」

遥「(あいつは今日もばいとか。がくせいは忙しいな…)」

ぺらっ

遥「なんだ、この本。……!数字…」

ぺらっぺらっ

遥「(計算か。昔習ったな…)」

遥「(こんな簡単な勉強なら、ばいとしたって平気だな…)」

遥「…外に出るか」

ガチャ

遥「(淫魔は人間を堕落させるもの…)」

遥「(体のつくりはほとんど変わらない。ただ、その欲求が人間より強いだけ…)」

遥「(……の、はずなのに)」

遥「(俺は…そういうことに、興味がない…)」

遥「(淫魔としては出来損ない…何度言われたか…)」

てくてく

遥「(…ただ、人間界が知りたくて何となく降りてきただけ…)」

遥「(堕落なんてどうでもいい。…で、も)」

遥「(人間の自立が生計を立てることなら、淫魔の自立はそういうことだ)」

遥「(戻ったところで、いつまでも半人前扱いされる…)」

湊「! あ、桜井ー(^^)」

遥「え」

湊「なんだ、迎えに来てくれたのか?」

遥「…違う。散歩だ」

湊「あれ、そうなの? まぁいいや、これから夕飯の買い物行くから一緒に来いよ」

遥「夕飯…」

湊「昨日こっそり料理番組見てただろ。なんか食べたいのあった?(笑)」

遥「! か、ってに覗くな…( `Д´)」

湊「風呂沸いたって呼びに行っただけだろー。ほら、スーパー行くぞ」

遥「……らあげ」

湊「ん?」

遥「からあげ…」

湊「唐揚げな。ふふ(´ω`)」

遥「(変な人間……)」

遥「(得体の知れない奴を住まわせて、なんで嬉しそうなんだ…)」

〜〜〜

遥「(うまい………(゜゜))」

遥「(人間はこんなうまいものを食べるのか…)」

遥「(こいつの料理が上手いだけか…?)」

湊「どう?」

遥「……まぁまぁ…だ」

湊「えー。自信あったのになぁ」

遥「(素直に認めるのは…癪だ)」

湊「仕方ない。明日から桜井のぶんはコンビニ弁当で…」

遥「嫌だ(怒)」

湊「昨日の昼に食べてたじゃん」

遥「…脂っこい」

湊「唐揚げ食べながら言われても(^^;)」

遥「(この白いのもうまい…さらだ…?)」

遥「(さらだは料理名…、材料は…だいこん)」

遥「(この材料は鶏の肉と、塩味の調味料と薬味。漬け込んだ肉に粉をまぶして油で揚げる。材料の種類が多いな…)」

遥「(うまいからいいか…)モグモグ」

湊「ふふ( ´∀`)」

遥「(あれが、てれびか。魔界の授業で習った…電波の映像)」

遥「(音と光をどうやって作ってるのか…わからないことがありすぎる)」

〜〜〜

遥「(って…)」

遥「こんなことしてる場合じゃない…(T_T)」

遥「(誰でもいいから堕落させて、証拠を審査会に持っていかないと…成人になれない)」

遥「(仕方ない…)」

遥「おい」

湊「ん?風呂はまだ沸いてないと思うけど」

遥「散歩してくる」

湊「………」

遥「な、なんだ…」

湊「心配なんだよ、わかるだろ。また変な奴に声かけられるんじゃないかって」

遥「Σ」

湊「…まさか、自分から声かけに行くんじゃな」

遥「ち、違う!飲み物…買ってくる、だけだ」

湊「そう…?気をつけてな」

バタン

遥「(あいつに言われると、調子が狂う…)」

遥「(堕落させる行為は作業…って、教わったはずなのに…)」

ドンッ

遥「…っ!」

学生「っとと!すみません、ぶつかっちゃって。大丈夫ですか?」

遥「あぁ…」

学生「あ、立てます?手、どうぞ」

遥「ん……」

ぐいっ

遥「!」

ばっ

学生「…?どうかしました?」

遥「な、何でもない…」

ばたばた

遥「(普通の、がくせいだった…)」

遥「(なのに、手に触った途端に…気持ち悪い、って…)」

遥「(触ることすら嫌なのに、堕落させるなんて…できるわけ、)」

遥「…っ……く、ぅ…」

遥「(やっぱり、俺は出来損ないなのか…)」

遥「(このままずっと、半人前…なんて…)」


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