:: お兄ちゃんと寝たいの
2014.08.18 (Mon) 04:00

・兄弟パロ(高2湊×中3遥)番外編
・設定そのままなので遥は甘えまくりな子


「ん……朝、か」

ピピピピ、と枕元の携帯が電子音を響かせ、湊はゆっくりと目をこする。アラームを止めようと、そっと瞼を開いた途端。

「な……っ」

絶句した。

「すぅ……」

目を開ける前から何故か体がだるいとは思っていたけれど、こういうことだったのかとため息をつく。隣ですやすやと眠る弟が、しっかりと自分に抱きついていたのだ。

「もー……起きろよ、遥」

ゆさゆさと強引に体を揺らせば、んん、と眉間に皺を寄せて遥が目覚める。しかし自分を起こしたのが兄と知るや否や、脚まで絡めてしがみついてくる始末だ。

「こ、こら。俺バイトなんだから…」

愛する弟に甘えられて嬉しくないわけがない。だが、いつまでもこうしていては早起きの意味もなくなってしまう。それに──。

(こんな薄着されたら、理性が保たなくなるっての…)

呆れ気味に目をやった先には、ショートパンツからにょきっと出た白い太腿。それをこっちに擦りつけてくるのだから、湊も気が気ではない。寝間着代わりのぶかぶかのTシャツは湊のものだし、屈まれると襟の開いた場所から胸元がちらちらと見えてしまう。思春期の男子にはあまりにも目に毒だ。

「なぁ遥。俺、昨日も言ったよな? 自分のところで寝て、って」

この子供部屋には二段ベッドがあり、下段を湊、上段を遥が使っている。それならば丸く収まるはずなのに、最近どうしてか、遥はこっそりと下段に潜り込んでくるようになった。今は夏休みであるし、湊はバイトのために普段より早めに就寝しているので、夜中ならばいつでも下りてこられるだろう。
湊がたしなめるように言えば、遥はむっとして抱きつく腕に力を込めた。

「上は…エアコンが直接当たって、寒い」

「だったらもう少し厚着すればいいだろ」

「……暑い」

ああもう、ととりとめのない応酬にやり切れなさを感じつつ、湊は無理やり体を起こす。遥も起き上がり、後ろからきゅっと抱きついてきた。

「…じゃあ、今夜は俺が上で寝る。遥はここでいいよ」

「……やだ」

(そんな甘えた声出すなよ…)

子供が泣きべそをかきながら愚痴るような台詞だ。これを言っても似合ってしまう十四歳がいるのも如何なものかと思う。
一緒に寝たい気持ちは湊にだってもちろんあるが、なにぶん今の季節は極端に薄着で、しかも遥がぺたぺたと不用意に触れてくるので危険だ。何が危ないのかは聞くまでもないだろう。

「──とにかく、今日は絶対別々に寝るからな。じゃ、バイト行ってくるから」

なだめるようにぽんぽんと遥の頭を撫で、細い腕をすり抜けてベッドから出る。遥はまだ不満げに頬を膨らませていたが、身支度を整えた湊は素早くキッチンへ向かった。
少しきつい言い方だったかもしれないが、さすがに遥も諦めてくれるだろう。何も一緒に寝ることだけが恋人としての愛情表現ではないのだし、他で甘やかしてあげればいい。そう思ったのだが。



「…俺の言ったこと、聞いてたよな?」

風呂から上がった湊が部屋に来た時には既に、遥が下段のベッドで寝転んでいた。はぁ、と深くため息をつく湊をよそに、遥は湊の服の裾をくいくいと引いてくる。

「だめだって。俺もう寝るんだから」

「ここで、寝ればいいだろ」

人ひとり分のスペースを空けるように遥は壁際に移動し、ぽすぽすと布団を叩く。湊が尚も返答を渋っていると、ショートパンツのただでさえ短い裾を、ちょこんとつまんでめくり上げた。下着が見えそうなその角度に、思わず湊も釘付けになってしまう。

「ちょ、何やってんだよっ」

「…すき、なんだろ。ふともも」

大胆な行動に自分でも少しばかり恥じらいを覚えたのか、裾を下に引っ張って戻しながら、遥が呟く。はっ、と湊は驚いた。
──以前、遥に自分のどこが好きなのかと尋ねられた際、湊は外見的な特徴をこう答えたのだ。

『そうだなぁ…ふわふわの髪と、かわいい顔立ち。あとは…肌が白くて、柔らかいとこ。こことか』

太腿をゆったりと撫でると、遥は少し驚いたようだった。その反応を見て、しまった、と湊も内心冷や汗をかいた。

『あ、いや…太腿が好きって気持ち悪いよな、ごめん。ほっぺたもぷにぷにで好きだよ』

──まさか、あの時のことを覚えていたなんて。てっきり、ショートパンツを履くのは暑いからだろうと思っていた。こんなハニートラップを仕掛けられていたとは予想外だった。

「そ、そりゃ……好きだけど…」

正直、三つも下の、しかも弟の誘いに心がぐらついている。好きな子なら当たり前だろうが、いくら男の性とはいえ、兄として情けない。

「こっち、来たら…さわっても、いい」

「うぐ……」

ショートパンツに包まれている細い腰が揺らめくたびに、煩悩という名の要塞がどんどん破壊されていく。

「ここも…ちゃんと、化粧水塗ってる」

見せつけるようにぺちっと軽く叩いた頬は、もちもちと柔らかそうでたまらない。いくらでもキスしたいと思わせるほどだ。
──けれど。

「…だめ。そんなの…余計にだめなんだ。一緒に寝るわけにはいかない」

しゅん、と遥が明らかに落ち込んだ表情でシーツを掴む。いろいろ甘えてくれたのにと思うと、本当に胸が痛い。

「…母さん、明日は早朝から仕事らしいんだ。朝ご飯の下拵え、してくる」

いたたまれなくなって、とってつけた理由を早口で述べて部屋を出る。なるべくゆっくり作業をしてからベッドに戻ろうと決め、湊はキッチンへ向かった。


***
続くよ(´・ω・)


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