:: 病/暗/痛 R18 2013.06.01 (Sat) 17:03 ・湊が病んでる ・拘束とか痛いのとか泣くのとか ・甘くて幸せな要素はない(´ω`;) ──いつからだろう。あいつがこんなふうに変わってしまったのは。 「小宮、遥ちゃん、また明日ねっ」 帰り道でルシと別れて、アパートに向かう。ちらりと隣を窺えば、目が合った湊は薄く笑った。声には出さず、口の形だけで伝えてくる。 "やっと二人きりだね" って。 見えない力で引きずられるようにアパートへ戻るなり、湊の部屋に連れ込まれる。ここはもう、部屋としての役割は果たしていないに等しい。用途はただ、ひとつしかなかった。 「おいで」 口調こそ優しいものだが、威圧感がびりびりと肌に感じられる。荷物を下ろしておとなしくベッドに腰かけると、雰囲気にそぐわない甘いキスをされた。 「きょ、今日は……」 「ん?」 キスの合間に、震える声を絞り出す。湊の瞳がスッと細められた。 「その……かる、めに…して……」 「何で?」 強い口調と共に睨みつけられて、指の一本さえもが動かなくなる。目の前の瞳にはもう、闇しか見えていない。 「か……体が、少し…つらい…」 服で隠れた場所には、きつく縛られた跡と叩かれた傷が残っている。今はまだ隠し通せていても、いずれルシたちには気づかれてしまうだろう。 そう思ってのことだったが、突然頬に走った痛みでその思惑は体と一緒に投げ出された。 「遥は……」 平手で打たれた頬がじんじんと痛む。口内のどこかが切れたのか、仄かに血の味がした。 「俺から、逃げたいんだ?」 「ち、違う……。このままだと、一緒に…いられなくなる……から」 「そんなの許さない。遥を奪おうとする奴は……俺が許さないよ」 両肩をシーツに押さえこまれ、そのまま唇を塞がれる。苦味しか感じない口腔をまさぐりながら、湊の手は服を剥いでいった。 「遥……きれい」 「ぅっ、く……」 縄の間から覗く白い肌には、鬱血の跡が点々としている。そんな体を、湊はうっとりと見下ろした。 「ん、く……うっ」 くわえ込んだ自身がゆっくりと律動を始める。ろくに馴らしもせずに無理やり埋め込まれたそれは、ぎちぎちと締めつけに遭いながらも体の奥を抉ってきた。内臓が突き上げられるような感覚が苦しい。 「う……っや、め…吐く……っ」 「いいよ別に。俺も、いっぱい注いであげる」 込み上げる吐き気をこらえていると、熱いものが最奥に放たれたのを感じた。ずるりと湊が抜け出ていけば、白と赤がその身に絡みついていた。 「遥。ねぇ…遥」 「う……っ」 覆い被さってきた湊が、ぺろぺろと眦の涙を舐めてくる。 「好きだよ。愛してる。愛してるから…ね」 幾分か痩せた体を縄越しに感じて、ゆっくりと頷く。すると湊は満足そうに微笑んで、隣に横たわって目を閉じた。縄は外されないままだ。 "今日は唐揚げだよ。あーんっ" "擦りむいた? もー、危なっかしいな" "照れちゃって…かわいいなぁ" 「ぅあ……っひ、ぅ……っ」 声を殺して、シーツに顔を押し付けて泣いた。湊は起きる気配がない。 幸せだったあの頃には、きっともう戻れないんだ。苦痛も我慢もなく、ただただ甘い時間に酔いしれていた、昔には。 (なら……逃げればいいのに) 家でなければ拘束はされない。大学へ行くふりをして、こっそりと逃げてしまえばいいんだ。この傷を見せれば、否応なしに保護してもらえるだろう。 ──でも。 そんなことをしたら、湊はきっと今以上に狂ってしまう。誰であろうと見境なしに、傍若無人の限りを尽くして自分を取り戻そうとする。自分以外の、何もかも全てを捨ててでも。 (それに…) 自由にならない腕をうまく使って、横を向く。安心した寝息を立てる横顔は、昔と何一つ変わらない、穏やかで優しい湊のままだった。 (いいんだ。こいつが少しでも、楽になれるなら……) 赤く腫れた頬を伝った涙が、静かにシーツを濡らす。括られている両手で、無防備な湊の手をそっと握れば、体の痛みが少し和らいだ気がした。 窓の外の闇が深まる中、重い瞼を下ろす。 朝になればまた、湊は元に戻る。酷い事をしたと詫びながら手当てをして、大学に出かけて、帰れば再び蹂躙される。その、繰り返し。 それが途切れた時には、おそらくどちらも息をしていないだろう。キスで窒息死なんて、いかにも湊らしい。 『好きだよ。愛してる。愛してるから…ね』 これは戒め。逃れられないようにするための、見えない鎖。けれど自分は、この言葉には確かに愛があるのだと知ってしまった。与えられる心地よさを覚えてしまった、から。 *** 十万打アンケで病みが割に多かったんでちょっとやってみました。怖い。依存しすぎてる湊と、逃げられないくらい好きになっちゃった遥でした。シミュレーション系ゲームのバッドエンドですねー ↑main ×
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