:: 延長してもいいですか
2014.01.30 (Thu) 23:31

「……おい」

「はーい」

背後からむぎゅっと腕をまわされ、遥は眉をしかめて低い声を放つ。

「明日はテストがある。…邪魔だ」

「あっ…ごめん」

しっしっと追い払うように手先を振ると、湊もさすがに呑気な声を一転させて謝ってくる。遥は真剣に勉強に取り組んでいるのに、自分だけが浮かれた気分になるのはよくない。少し落ち込んだ様子で手を引っ込めた湊を見つめ、遥は小さく呟く。

「……少しなら、いい」

「えっ」

途端にぱっと顔を輝かせ、湊は嬉しそうに再度抱きついてくる。ため息をつきながらも、遥も耳を赤らめていた。

「じゅ……十分経ったらどっかいけ」

「うん」

聞いているのかいないのか、すりすりと後ろ髪やセーターに頬摺りをして湊が返答する。遥はまた、教科書をめくり始めた。

〜〜〜

「あ」

数式から目を離し、ふと時計を見る。勉強に夢中で気づかなかったが、約束の十分はとうに過ぎていた。遥はむっとして僅かに振り返る。

「おい。もう十分過ぎて…」

言葉は続かなかった。ぺたりと自分の背に頬をあてて、湊はすうすうと寝息を立てていたのだ。遥は慌てて口をつぐむ。
甘えてきた原因でもあるのだが、湊はここのところ、バイトが忙しくて休む間もなかった。本人が自覚していなくても、疲れは溜まっていたのだろう。こんなところで寝てしまうくらいなのだから。

「……ったく」

そばに落ちていたカーディガンを拾い、背を包むようにして湊に纏わせてやる。これで少しは温かいはずだ。今の自分と同じく。

「……ちゃんと…休めよ」

首筋を掠める黒髪をぽんと叩き、遥は再びシャーペンを走らせた。


***
書くのは15分かかってしまった(;´ω`)


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