:: 初夜編序文+おまけ
2013.11.14 (Thu) 00:08

・初夜編の始まり+えっち前の様子をちょこっと
・湊遥は高1
・エロ本見ても気持ち悪いとか思っちゃう自分はおかしいのかなって心配になる遥


緑蘭高校の昼休みは長い。12時10分から、約1時間後の午後の授業が始まるまで続く。昼食を摂るには十分すぎる時間だ。後半に差しかかると、教室はいつものように生徒たちの談話で沸いていた。
暇であるのは遥も同じだが、湊は委員会の仕事で席を外しているのでもうしばらくは帰ってこない。頬杖をついて窓の外を眺め、午前中に覚えた数学の公式を頭の中で反芻していた。
と、その時。遥の席の後方で、数人の男子が円陣のように丸くなってひそひそと話していた。遥は気にも留めなかったのだが、その近くにいた女子のグループがいっせいに非難を始めたので嫌でも耳に届いてしまった。

「やっだー。そういう本学校に持ってこないでよ、気持ち悪い」

「うるせーよ、お前らには関係ねぇだろーが」

明らかに嫌悪を露出させた女の子に対し、男子のひとりはしっしっと追い払うような仕草で彼女に反論する。すぐに輪の中に戻っていく男子を眺め、遥はやれやれとため息をついた。年齢指定の雑誌か何かを持ち寄り、思春期にありがちな猥談を繰り広げているのだろう。教師の目が届かない場所とはいえ、興味のない者にしてみれば迷惑以外の何物でもない。再び外に目を向けようとした遥だが、男子のひとりが含み笑いをしながら、あることを仲間たちに提案してきた。

「なぁ、これ小宮にも貸してやらね?」

(なっ……)

知った名前が出た途端、遥は思わずぐるりと体をねじる。

「そういやあいつ、この手の話ってあんまり乗ってこねーよな」

「興味ないわけじゃねぇだろ。彼女がよっぽどの美人でも、たまにはこういうの見たくなるだろうしな」

「ま、あいつ経験多そうだから女の裸くらい見慣れてるだろーけど」

などと言いつつ笑い合っている男子たちを遥が睨んでいると、その視線に気づいたひとりがにやっと口角を上げる。遥は慌てて前を向いたが、とん、と後ろから肩に手を置かれた。

「なんだよ桜井ー、お前も見たいのか?」

「別に……見たくない…」

未だに湊以外の人間と話すことには慣れておらず、口ごもりながらも遥はかぶりを振って答える。へー?とからかうように顔を覗きこんできた男子は、遥の目の前でばさりと雑誌を広げた。

「っ……やめろ!」

すぐに本を振り払って目を背けたが、今までそんなものを全く知らなかった遥には衝撃が強すぎたらしい。たった一瞬見た写真でも、鮮明に脳裏へこびりついてしまった。

「ちょっとやめなさいよ! 桜井くん嫌がってるじゃない!」

「あんたたちとは違うんだから!」

周りの女の子たちはどちらかといえば遥の味方なのだろう、嫌悪感を剥き出しにした遥を庇い、男子たちに反発し始めた。

「こいつだって男なんだから見たいだろーと思って親切にしてやったんだろうが」

「いい加減にしてよ! さっさとしまわないと先生に言いつけるから!」

気の強い女の子にそう言われてしまうとさすがに言葉に詰まり、男子たちはぶつぶつと文句を口にしながら雑誌を鞄にしまい込む。縮こまって会話を聞いていた遥はほっと胸を撫で下ろしたが、気分の悪さはまだ抜けていない。

(あんなの……何が面白いんだ…)

見せられたページはおそらくその男子のお勧めだったようだが、当然ながら遥にとっては髪の毛の先ほども興奮できない代物だった。申し訳程度の修正を施した、裸の男女が濃厚に絡み合っている写真。回想しただけでも吐き気に似たものがこみ上げる。できればもう二度と見たくない。
遥はふと、数日前の保健体育の授業を思い出した。いや、こっそり数学の勉強をしていたので授業自体はほとんど聞いていなかったのだが、教科書くらい開いていなければさすがにバレる。そこでちらっと見た文章だけは記憶に残っていたのだ。

『さまざまなメディアを通して性的興奮を覚えた際に、』

この下りだ。残念ながら続きは読まなかったし読もうとも思わないが、この文の主語が思春期の男子であったことは覚えている。思春期という単語も知っている。その時期に、今の自分があることも。

(おかしいのは……俺のほうなのか)



〜〜〜


「おいで?」

湊の優しい声に促され、遥は下を向いたまま手を乗せる。これまでにないほどどくどくと脈打つ鼓動が手のひらからでも伝わってしまいそうで、握られると一際大きく心臓が跳ねた。
ベッドに腰を下ろすと、まっさらなシーツが途端に皺を作る。そんな些細なことさえもが、この行為の淫靡さを物語っている気がしてならない。湊も隣に座り、遥の緊張を少しでも緩和させるためか、ゆっくりと肩を抱いて髪や頬にキスを落としてくる。それがやがて合図のように唇へ触れ、重なる時間が徐々に長くなっていく。繋いだままの手は小刻みに震えていて、湊の手も心なしかいつもより冷たく感じた。

「ん……っ」

その代わり、口づけを深めようと差し入れられた舌は熱く、ぬるりと絡められるとすぐに息が上がる。既に火照っていた体が、奥のほうからじくじくとくすぶっていくようだった。


***
ちゃんと書きたい(泣)
完成できればいいなぁ^^;


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