君に好かれるような男の子になりたい。だから僕は君が好きだと言ったものを取り込むことにしました。そしたら、必然的に君が好きなものになれるでしょう?そのために、頑張って君と一緒に行動しました。


攻めてる時の吹雪くんて、クールでかっこいいよねといったから、僕はなるたけ素っ気なくしてもう片方の僕みたくなりました。(自分の事は「僕」じゃだめかな、「俺」なのかな。僕自身なのに難しい…)

次に帝国の源田くんて、大人っぽくて頼れるよねといったから、僕は気持ち余裕を持って行動して帝国の源田くんみたくなりました。(困ったら僕のところにおいで。僕がなんとかしてみせるから)

次に風丸くんて、線が細くてかわいいよねといったから、僕はいつもより柔らかく笑って風丸くんみたいになりました。(女の子みたいって、どういうことなんだろ)

最後に世宇子の照美くんて、強くて綺麗だよねといったから、僕は暑苦しくて嫌いな特訓にも参加して亜風炉くんみたいになりました。(…なんちゃって、僕なんてまだまだなんだ)



そんな風に毎日毎日、がんばりました。でも君は僕を不思議な目で見るようになりました。


「最近変だよ、吹雪くん。どうかしたの?」

「僕…あ、俺は…、そんなこと…」

「ううん。なんか、変」


君が泣きそうな顔をするから、僕は堪えられなくなって今までのことを言いました。そしたら君は眉毛を寄せて唇を噛んで、どうして?と言いました。



吹雪くんは十分強い。無理するくらいなら止めて。私には今の君が1番輝いて見えるよといったから、僕は弱くなりました。

吹雪くんはかわいい。偽るくらいなら止めて。私には今の君が1番愛らしく見えるよといったから、僕はかわいくなくなりました。

吹雪くんは大人っぽくなくていいの。追い詰めるくらいなら止めて。私には今の君が1番頼れるよといったから、僕はこどもになりました。

吹雪くんはかっこいいじゃない。苦しむくらいなら止めて。私には今の君が1番すてきに見えるよといったから、僕はかっこよくなくなりました。



足して足して、引いて引いて。
残ったのは「僕」でした。でもそれでもいいんだ、それが君なんだ。私はそんな君が好きなんだよと君は言いました。僕は嬉しくて、笑いました。君も笑いました。





かっこよくなくて、頼れなくて、かわいくなくて、強くない僕だけれど、今の僕を愛してと、僕自身を愛してと、自信を持っていえました。
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