「じゃあ僕がさんかい好きっていうから、いっかいでも恥ずかしがったら僕の勝ちね」

「…幼稚」


移動中のバスの中で、なまえと吹雪は隣り合わせに座っていた。染岡は後ろで仮眠をとっており、彼に限らず誰しもが試合による疲れで死んだように眠りにつく。その中で、何をするでなく起きていたのは、監督と吹雪たち、そして言わずもがな運転手というたった数人だけ。どうして早いうちに眠りにつかなかったのか、そうしていれば隣に座るよくわからない男に絡まれずにすんだのにと、なまえは心の中で何度もため息をついて後悔した。


「あはは、幼稚園ではこんな遊びしないよ」

「…そういう意味ではないな」

「じゃあ、いっかいめね!…すき」


話しているというには理不尽な会話に、なまえは頭を抱えた。一方の吹雪は嬉しそうに顔をほころばせ、首に巻くマフラーをくいくいともてあそんでいる。そのうえ、どうかなどうかなと、なまえの顔を覗き込むので、さすがの彼女もいい加減にしてと威嚇した。


「えー…もったいないよぉ。せっかく二人きりなのにさー」

「…あー、残念。私は寝るから、今から一人っきりになっちゃうね、残念残念」

「ふふ…そういう冷たいかんじ、嫌いじゃないな。つまり、僕は君がすきなんだ」


あれあれ…にかいめも駄目だったね。にっこりと吹雪が笑うと、なまえは呆れたように肩を落とした。


「しかたねぇな。おい、なまえ…」


次に声をかけた吹雪はやけに声が低く、雰囲気にもなにか違和感があった。


「………」

「あん?無視か、よっ…と」

「わ、ちょっ…近い近いっ」


慌てるなまえを無視して、吹雪は身を寄せた。その右手はなまえのふとももに置かれ、さわさわと制服のスカートの裾に近づいている。もちろん抵抗を試みるなまえだが、おいおいゲーム中だろ?と吹雪によって妨げられた。


「いやいやいや、よくないよね」

「あんだよ、邪魔すんなって…」

「うるさい変態」

「なんだなんだ?…ずいぶんな言われようじゃねぇか。つうかよー、お前は変態じゃねぇってのかよ。俺に囁かれて感じてただろ?」

「なにを…」

「あ、い、を、だ、よ。なんだぁ?…そんな顔して否定すんなら証拠を見せな、証拠。とりあえず、触らせるとかな。ま、見るだけでも良いけどな」

「…ことわる」


はぁ?じゃあテメーが自分のぱ…そう言いかけた吹雪を、なまえが間一髪で制した。わーわー喚く吹雪に、なまえは若干の申し訳なさを感じながらも、気がつけば眠りについていて。次に目を開けたときには目の前に吹雪の瞳があった。


「目が覚めたかよ、愛してる」

「うわぁ、なんて脈絡のない…」


眉をひそめるなまえを吹雪はぎゅうとを抱きしめて、動きを封じた。耳元で彼が囁いたのは、下のが恥ずかしいことになってんじゃねーか?という言葉だった。


「は、はぁ?やめてよ、のっけから恥ずかしいな!」


それを聞いた吹雪は俺の勝ちー!と喜んだ。
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