「猫田、猫背になってる」

「…うっせー」

「そんなこと言わないで、今のうちから直してた方がいい」

「は!?」


オレはいいって言ってんのに、なまえはがばぁとのしかかってきた。ベッドにむぎゅうと押し付けられ、ぐえっとなるオレ。なまえは全く気にしていなかった。


「ちょ、どけよ、おめーんだよ」

「うわ、なんて失礼なんだ。どうなんだいそれ」

「うっせ、知るか。のけ」


そう言ってんのにも関わらず、なまえはどこうとしない。むしろ、よーしとどこか意気込んでいる気配がした。


「な、何する気だ…」

「そら、矯正だ」


その嫌な予感は的中した。なまえは自らの冷たい手を、オレの背中目掛けてぐっと押してきたのだ。冷たいしこそばゆいしで、びくりとしなる身体を、なまえは面白そうに笑っていた。


「あっ、ちょっ…や、めっ…」

「…はは。なんだい、おかしな反応をするね」

「ばっ、冷た…あっ、あっ…や、やめろ!」


オレにだって限界はある。あんまりしつこいので、なまえを背中の上から放り落とした。見事に床に落っこちたなまえは、腰をさすりながら痛いと言う。


「なんだい、急に…」

「うっせぇ!ば、ばっかじゃねぇの!マジで!お前…女のくせに…」

「…え?女のくせに?何か女だと問題あるのかい」

「………」


なまえは少し怪訝な顔をした。きっと、女っていうのを馬鹿にされたと思ったのだろう。でも、違う。オレは…。


「女のくせに…、」

「さっきからなんだい。はっきりと言ったらどうだ」

「女のくせに、誘うみたいなことするな」


これを言ったら、なまえは顔を真っ赤にして目を見開いた。オレだって恥ずかしいから、少し俯く。でも本当に、さっきは駄目だと思ったんだ。このままじゃあ、ドキドキして死んでしまうかと心配してしまったほどだ。なまえは蚊の鳴くような声でゴメン…と呟いたけれど、オレは返事をせずになまえを抱きしめた。





普段の体温で触られたはずなのに、なまえの手を冷たいと感じてしまったのは。オレが普段より欲情していたからなのかなぁと思って、少し照れた。
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