「ボランティアでな、保育園に行くことになったんだよ」

「へぇ、よかったね」

「あぁ。これで子供たちと触れ合える。…とても楽しみだ」


冷泉は眉一つ動かさない、クールな表情で言った。なまえはその顔を、相変わらず怖いなぁと思ったが、それを言うと彼は地球にめり込む勢いで凹むので止めた。


「なまえも参加したらどうだ。まだ募集しているみたいだぞ」

「そうだね、参加してみようかな。内申書も良くなるし…」

「なに!?そういう考えは感心しないな。あくまでも人に尽くすことを第一に考えないと駄目だ。ボランティアってそういうものだろ?」

「ご、ごめんなさい…」


なまえが縮み上がるほどの気迫。冷泉はなまえの手を取って熱弁を続けた。


「いいか?この手。…この手に子供たちの未来がかかっているんだ。保育士というのは、素晴らしい職業だよな。オレは猛烈に尊敬している」

「は、はい…」

「そう、保育士は素晴らしい。…だがしかし、重労働であるのも否定はできないだろう?これからは男手が必要なんだ。体力的にも男女が支え合ってやっていくべきだろ?わかるか、なまえ」

「う、うん…」


そのあとも冷泉の熱血論は、なまえを無視してぺらぺらと続いた。彼女が解放されるころには外はもう真っ暗で。彼女は精神共々参りきっていた。


「む!もうこんな時間か」


冷泉がそう言うのも頷けるほどの長丁場。さらば、と古風な挨拶をして去り行く冷泉を見送るなまえだが、彼女もまた友達を待たせていることに気がついた。


「わ、私も行くね。冷泉くん」

「あぁ。…そうだ、なまえ。オレのことは、錐と呼んでくれないか」

「え、なんで…?」

「…それは、」


急に口ごもる冷泉に、なまえは不審そうに近づいた。すると冷泉は意を決したように言うのだ。


「お、お前はオレの話を聞いてくれる唯一の人だからな。近づいた印に、名前で呼んで欲しいんだ。それにその、オレは、お前との、





子どもが欲しい」





だから、その、つまり、オレはお前のことが好きなんだ。と冷泉は続けたけれど。ある意味直球、ある意味変化球な告白には、流石のなまえも固まった。それを陰から見ていた楠木たちは、あまりの衝撃に吹き出した。
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