心が痛いって言葉を作るあたり、日本人は情緒が豊かだよなぁ。と彼は言った。私はそうだねとも、そうかなとも思わなかった。ただ眼下の川を眺めるだけ。石や岩にぶつかっても、形を変えて受け流すことができる水が、とても羨ましかった。私は不器用で、そのわりには自意識過剰で。周りが気になって気になって、仕方がない。気持ちが悪いくらい人の目を意識した。本当は、したくないのに。心が痛いって感じるならさ、お前はいい人間だよ。人の痛みがわかるってことだろ?俺なんかより、ずーっとまともだ。そんなことを呟く彼は、いつの間にか隣に立っていて、空を仰いでいた。命っていうのは、自分で絶ったら輪廻に組み込まれねーんだとさ。そういうことを広めるあたり、命を大事にさせてーんだよな、きっと。お前はいい人間だからわかるだろ?彼は光のない目で私を見た。誰にも迷惑をかけないだろうと思ったのに。悲しむのは親くらいだろうと考えたのに。私の行動は、地獄の底から沸き立つような、彼の憎しみを買ってしまうらしい。お前が外れたら、ずっと恨んでやる。
とも言われた。





「それでもしぬのか」





彼の方が不器用なのだろうか、それとも本気なのだろうか。一歩だけ足を引くと、数百メートル下の川に、小石が転がっていった。
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