「不動くん、幸次郎を知らない?」

「知るかよばーか」


練習後の欝陶しい倦怠感の中、あいつが俺に話しかけてきた。なんだ珍しいな。そう思って何の話かと耳を傾けたら、源田の話。またかよ、なんて。こんな期待ハズレにも慣れた自分が嫌だった。だからいつものよーに憎まれ口の本領を発揮して、いつものよーにアイツに嫌な顔をされた。


「私、そういう頭悪い人嫌いなんだけど」

「おぉ偶然。俺もてめぇみたいなインテリ女、大っ嫌い。よかったなぁ、俺たち気が合うぜ?」


盛大に笑うと、アイツは信じられないとでもいうような顔をして去っていった。俺は一つため息を付いて、またかよ、なんて。ここで追いかけて、冗談だよっていえたらなにか変わるのか。毎日そんな妄想ばかり。自分に腹がたつ。けれどぶつけるのは他の誰か。俺ってサイテーなやつだよな。


…反省は、しないけど。


たまたま隣を通りかかった源田の頭を殴ったら、ぺちんといい音がした。
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