「レーゼと俺、どちらを取る」

「…どっちも取りませんが」


彼女ははっきりと答えた。あぁやっぱりお前はレーゼが好きなんだな?俺が好きなら俺って言ってくれるだろうところをお前は曖昧に返事をした、つまりお前は俺に気を使ってはっきり言わなかっただけであって、本当はレーゼが好きなんだ。なんなんだ、日本人ってやつは。気を使って相手を傷つけないようになんて、俺にとっては迷惑以外のなんでもないよ。はっきり言ってくれれば諦められるのに。…半ばやけになって、俺は彼女にあたり始めていた。


「何度も…」

「え?」

「何度もシュミレートした。でもお前は一度として頷いてはくれなかった」

「あぁそう…、宇宙の技術ってすごいね」

「なぜだ」

「は?」

「なぜ、レーゼを選ぶ」


彼女は困惑した表情で俺を見た。俺だってわからない。俺だってしらない。どこがわるいのか、どこがレーゼと違うのか。見当たらないし、見つからない。俺もレーゼを真似て日本の言葉を学んだし、レーゼと必殺技を組めるほどサッカーの練習もした。なのにお前は、お前は…。


「日本にはこんな言葉がある」


聞き覚えがあるフレーズに、焦って振り返った。そこには険しい顔のレーゼが腕を組んで立っていて。


「れ、れれれ、レーゼ…さま」

「今更、さまを付けても遅い」

「も、申し訳…」

「いやいい。それよりディアム、日本にはこんな言葉がある」

「…はい」

「当たって砕けろ、と」


レーゼが指を鳴らすと、システムが強制終了した。目の前の彼女の姿もぶれて消える。名残惜しそうに光の粒が、きらきらと輝いていた。その光のカーテンの向こうに不敵に笑う恋敵の姿。俺は情けなくて、笑うことしかできなかった。


「…お言葉ですがレーゼさま。砕けてしまっては、元も個もないのでは」

「どうかな。やらないよりはやるほうがいいだろう。それに…」


ライバルは少ない方がいい。にやりと笑いを付け足したレーゼに、挑戦的な笑みを浮かべている俺。この勝負の行方は誰もわからないけれど、とりあえず俺は声をかけるところから始めてみようと思った。





(朝早くに、パンをくわえて角を曲がると素敵な出会いがあるらしいぞ、ディアム!)
(本当ですか、レーゼさま!早速試してみましょう!)

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