結び目が解けないように。(復活・ディノヒバ)


ギシッ…という小さな音で目が覚めた。


起きたことを悟られないよう、ごく自然に寝返りを打ち、恭弥は音のした方へ身を反転させた。そこには触れるべき人物はおらず、行き場の失った腕は無造作にシーツの上に投げ出された。
(まだ暖かい…)
そこから伝わる温もりと鼻をかすめる彼の匂いが心地良い。
「恭弥、起きたのか?」
閉じた瞳の上からでも分かる影。顔を覗かれていると悟り一瞬眉をしかめる。じろじろ見られるのは好きじゃない。
でも、決して瞳は開けない…。
「おはよ、恭弥」
熱っぽく囁かれ、恭弥は思わず毛布で自分の頭を覆った。隙間からさらりと髪を梳く大きな手に、口元が緩む。
「…恭弥」
毛布をそっとめくられて、額に口唇の感触がした。恭弥、恭弥…と自分の名を何度も囁やき、顔の至る所に口唇を落とされる。くすぐったくて、ゆっくりと瞳を開けると、目の前には輝かしい太陽があった。
「お、やっと起きたか」
暖かな日差しをたっぷり浴びて、ディーノが笑う。ディーノは少しかがんで恭弥の目線にあわせ、口唇に短いキスを一つ贈った。

「……仕事?」

「あ〜うん。ちょっと向こうでトラブルが起きてさ…」

もっと恭弥と居たかったのに…と文句を言いながら身支度を始めるディーノに、恭弥は一言、あっそ…と呟いて再び身を反転させた。
すると途端にディーノは慌てだし、わたわたしながら寝てる恭弥の側に寄る。
「きょ、恭弥!?ごめんな!片付いたら直ぐに帰って来るから…」
(別に怒ってるわけじゃない)
それに怒る理由も無い。彼の仕事は自分なりに充分理解しているつもりだ。
「お、お土産買ってくるよ!恭弥、何が欲しい?」
(別に何もいらない。子供扱いしないでよ…)
背中越しに伝わるディーノの困った表情、情けない声が子守歌に聞こえるせいか、とろとろと睡魔が襲ってくる…。
(…もっと、困れば良いんだ)
大きく息を吸って彼の匂いを確かめると、恭弥は誘われるがままに瞼を落とした。

――行ってしまうのなら自分が寝てるうちに


END

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