歴史をただ刻むように(復活・ベルマモ)


 『俺さ、マーモンのこと好きになっちゃった!』

 満面の笑みでそういうと、奴はいきなりナイフを首に突き付けてきた。



■歴史をただ刻むように。■




 ナイフの当たっている箇所が熱い。痛みは無いが、もしかしたら薄皮一枚は裂かれてるかもしれない。確認すべく首に手をやろうとしたが、すぐに止めた。今やれば…きっと、手を切り刻まれる。

「ご挨拶だね、ベル…これが仮にも好きな相手にすることかい?」
 震える唇をかみ締めながらようやく紡いだ言葉に、ベルは口の端を目一杯上げながら嗤った。

「だって俺、王子だもん」

 意味が判らない。王子なら何をしても許される。そう言いたいのだろうか?

「マーモンさ、俺のこと好きじゃないでしょ。好きな子に想われないって悲しいじゃん?だから俺考えたんだよね。確実に想わせる方法!」

 グッとナイフに力がこもる。首に食い込む。それを横に引かれたら、僕は確実に出血多量で息絶える。
「…その答えがこれ?どうやったらその思考になるのか不思議だよ」
 何でベルに好かれただけでこんな目に遭わなきゃならないんだ。ふざけてる。こんなの、死んでも死にきれないじゃないか!
 睨むようにベルを見上げれば、そこにはさっき見た満面の笑みがあった。



 「…なあマーモン。今、誰のこと考えてる……?」


 優しく頬を撫でられ僕の意識はここで途絶えた。

 数日後、目覚めたベッドの上で僕は首に巻かれた包帯に触れながら、働かない脳みそで『こんなことが今後も続くのだ』と悟り、血が出るまでギリギリと口唇を噛んだ。


■歴史をただ刻むように■
(憎しみはどんな感情よりも勝るから。だから君は永遠に俺を想うんだ。)

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