けほり、小さく咳をこぼす。なんだかイガイガする喉を触って、首を傾げる。なんだか喉の調子が悪い。あと頭も少し痛い。…なんて考えつつ、ふと壁にかけてある時計を見ればそろそろ部屋を出なければいけない時間になっていた。

慌ててカバンを掴んで、部屋を出る。喉と頭の痛みは寝不足のせいだろう、きっと。


―――――


「、…っけほ、」
「咳? 陸、体調悪い?」
「…ん、へいき」
「ホント? 風邪流行ってるから気をつけてね」

たまたま教室までの廊下で一緒になった稜が、心配そうにこちらを見上げる。星空のうかぶ夜空みたいなキラキラした目に、ちょっとだけ笑う自分がうつっていた。それだけのことに何故だが気分がよくなって、ちゅ、と稜の瞼に唇をおとせば、真っ赤になって慌てる稜。可愛くてぎゅうと抱き締める。そうしていたら、後ろから頭を小突かれた。

「朝っぱらから廊下でなにやってんだ」
「ん、ゆずる、おは…よう」
「おはよう、譲くん」
「聞けよ。あー・・・はいはい、おはよう、陸と稜」

だれかと思えば譲で。なにやってるもなにも、兄弟の親睦を深めてるだけなわけで。しかも譲の前ではしょっちゅうやっていることだ。首をかしげて、とりあえず譲に朝の挨拶。腕の中から稜もにっこりわらって挨拶。

そんな俺達をみてちょっとだけ溜息を吐いて、しかしすぐに笑顔を浮かべる譲。どこか意地悪な笑み。かっこいいな、なんて思って。稜を腕の中から開放して、譲にぎゅうと抱きつく。ちょうど顎の辺りに譲の鎖骨。首に擦り寄って、ぎゅうぎゅうと抱きついていれば、譲の腕が腰に回される。

「どうした、今日はやけにひっつくな」
「んー…ふわふわ、…す、る」

んん、と譲に存分に擦り寄って、手を離す。微笑ましそうにこちらを見つめていた稜にもう一回抱きつく。ふわふわの黒髪に頬をのせて、なんだかふわふわとブレる視界に目を擦る。

「ふわふわって、…陸おまえ」
「なんか…いつもより体温が高いよう、な」

稜と譲が目を合わせる。ん? 二人でなにを確認しあってるんだ? シャンプーの清潔な香りがする稜の頭から頬を離して、首を傾げる。なになに? なんか、ふわふわする。

ぼうっとしていたら、譲に背後から抱きかかえられた。え、本当になに。なにごと?

「陸の部屋な」
「まって、陸の部屋には氷とかない気がする。譲くんの部屋でお願い」
「わかった。」
「じゃあ僕は陸と譲くんの担任に休みって伝えてくるね。」
「わりい、頼んだ。オレは陸をとっとと部屋につれてく」
「うん、お願い。なんか必要なものがあったらメールしといてね。買ってくるから」
「ああ。」
「じゃあまた後で。」

口を挟む暇もなく。くるりと踵をかえした譲が小走りに廊下をすすむ。向かう先は先ほどの会話からして、譲の部屋らしい。人一人抱えて、小走りできるってすごい力持ちだよな。断じて俺が軽いわけじゃない。


−−−−


ピピピ

「鳴ったか。陸、何度だった?」
「・・・・・・」

体温計をみつめる。凝視しても温度はかわらない。

「・・・38.2度、」
「・・・風邪だな」
「風邪だね」

はあ、と溜息を頭上で吐かれる。氷嚢とってくる、と残して稜が踵を返す。譲にぺちんとおでこを叩かれた。

「高熱じゃねェか。気付かなかったのかよ、陸」
「ん、…なんか、のど・・・いたいな、って・・・」
「気付いてたなら休め。」
「ごめ、ん」
「風邪ひいたらすぐ倒れるだろうが、おまえ」
「・・・うん・・・」

病弱なわけじゃない。ただ、風邪への耐性がひくいというか、なんというか。

「心配するだろうが、ばか」
「・・・ん、ありがと、ゆず・・・」

くしゃりと、髪の毛をかき混ぜるようにして頭をなでられる。怒っていた表情をけして、気の抜けたように譲は微笑んだ。

「寝ろ」
「、ん・・・」

ふわふわとした頭で、譲に微笑み返す。譲の頬が赤くなったように見えたけど、・・・気のせいか?



ゆるりと、まぶたをおとす。

(陸の笑顔なんてよく見るってのに・・・顔があちい)


……………………
祐稀さま、リクエストありがとうございました!
恋人設定がまったくといっていいほど活かされてなくて申し訳ないです・・・!しかももう一年くらいたってますね、リクエストいただいてから・・・!orz
たいへん遅くなった上に、まだご訪問くださってるか分かりませんがよろしければ貰ってやってくださいませ・・・!
素敵なリクエストでとても執筆が楽しかったです!


110228/ミケ


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