黒夜さまのリクと薄っすらリンク


すうすうと、健やかな寝息にその場にいた全員が硬直した。ピシリと音を立てて固まった彼らは、各々頬を染めたり鼻を押さえたりと忙しい。全員が全員、一様にして一箇所をじっと凝視している空間は不気味なことこの上ない。しかしながらほぼ全員が整った顔をしているため、なんだか不気味に感じないのは幸か不幸か。親衛隊がみたら悶絶モノ、後で全員が己を振り返ったら後悔モノ、ということだけは確かである。


中庭のある一角。芝生の上で丸くなる人影がふたつ。ひとつは陸の弟である稜。もうひとつは、

「また小さくなってやがる・・・!」
「やっぱりあれは陸か! 小さい陸も相変わらず可愛いな!」

いつぞやのように幼子の姿で、くうくうと穏やかな寝息をたてて眠る陸であった。

硬直から逸早く解けた譲が陸に駆け寄り、稜の肩をそっと叩いて起こした後にひょいと陸を抱え上げる。からりと笑って言い放った高貴の言葉に、皆が硬直から解けていく。夢から覚めたかのような顔で、しかし目をこすって陸を凝視しては顔を染める面々は、なんだか生娘のように初心に見えてしまうから不思議である。

「ん・・・あれ、・・・陸・・・?」

起こされた稜が目をこすりながら上体を持ち上げ、譲を見上げる。隣からいなくなった人物を探すために彷徨わせた瞳は、譲の腕の中に抱かれる人物を捕らえると驚愕に見開かれた。

「っ陸!?」

寝起きもなんのその、素早い動作で立ち上がった稜は何時ぞやの様に幼子の姿にまで小さくなってしまった陸を凝視する。

どういうこと、なんでまた小さくなってるの・・・!?

稜が今にも叫びだそうとした瞬間、譲の腕の中からひょいと陸を掻っ攫った白い手に言葉を飲み込んだ。

「陸が起きちゃうよお? 静かにして」

にこっ、と邪気のない笑みなのに背筋が凍るようなそれを浮かべる生徒・・・一は、稜に笑いかけ、手の中の陸を眺めて上機嫌に笑みを深める。譲の手の中から陸を浚おうと、それぞれに手を伸ばしていた面々が一斉に手を引っ込めた。

いくら天下の生徒会役員と謳われようと、権威ある委員長を務めようと、怖いものは怖い。一部の生徒を除いて、この場に居る殆どの者にとって色々な情報を知る一はパンドラの匣のような存在なのだ。
つまり下手に刺激して良からぬ情報を陸に流されては困るということで。・・・想い人が誰かなんてとっくにばれているのだろうから、一がピンポイントに陸へ情報を流すのは容易に想像がつく。

じりじりともどかしそうに、一の腕の中の陸を眺める面々を楽しそうに見渡す一。

陸の髪の毛を梳いて周りの反応を楽しみ。
陸の頬を撫でて周りの反応を楽しみ。

いちいち反応を返す周りが楽しいのか、けらりと歪な笑みを一は浮かべた。


「問題です」
「?」
「陸がちっちゃくなった原因はなんでしょお?」

そういって首を傾げると、これ見よがしに制服のポケットから怪しげな小瓶を取り出す一。紫色のそれを揺らす一に、周囲が息を呑んだ。

まさか。


誰かが漏らした言葉に、にっこりと今日一番の笑みを一は浮かべた。


「一滴で効果は一時間! 今なら一瓶1万円だよお」

誰がゲットしたのかは、諭吉をみて笑う一のみぞ知る。ああ、あと買った本人も、だね。


……………………
澪さま、リクエストありがとうございました!
リクエストに沿えてませんね!申し訳ありません。よろしかったら受け取ってやってくださいませ!orz

101020/ミケ


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -