「桂木さま・・・! あのこれ俺の好きなブランドのお菓子なんですけど貰って頂けませんか!?」


顔を真っ赤に染めて息継ぎも無しに言い切った彼は、目を丸くさせる陸に向かってずいと手を差し出した。緊張からか小刻みに震える手の中には、可愛らしいピンクのリボンで包装された箱がしっかりと握られている。その包みと生徒を交互に眺める陸は、こてんと首を傾げた。
陸が人と接触するのを好まないことを知っているのだろう、少し離れた距離から手を伸ばす彼に、陸がひらすら疑問符を浮かべる。

目の前の生徒は、喋ったこともない知らない人で。でもその人は自分に対してお菓子を差し出してて。大好物のお菓子を差し出してて。尚且つ差し出されてる包みのブランドロゴが、自分もダイスキなところのもので。でも彼はやっぱり知らない人なわけで。知らない人から食べ物を貰うのは、どうなのだろうか。

思案し始めた陸を察知したのか、耳まで赤く染めた顔を俯かせていた生徒が、ばっと突然顔を上げる。あまりに勢いのいいそれにびっくりした陸が、半歩足を後ろにずらした。

「あ、あの俺、稜くんのクラスメイトで! 俺、ずっと桂木さまのこと憧れてて、それで、稜くんのこと羨ましくて! でも稜くんは桂木さまの弟だからって鼻にかけないでくれて、むしろ桂木さまの話で盛り上がっているって言うか! だから、その、えっと、りょ、稜くんとこれ食べてください・・・!」

(そしてあわよくば俺のことを認識してください!)

ますます顔を染めて、ずいと更に手を差し出した彼に、陸はすこしだけ顔を緩めた。稜のクラスメイトなら仕方ない、ここで断ったりでもしたら、稜への心象まで悪くなるかもしれないからな。


・・・べつに、お菓子が食べたいからってだけじゃないんだからな。

「・・・ありが、と。・・・もらう」

ポツンと呟いて、差し出されたそれをしっかり受け取った陸に、泣きそうに目を潤ませて頬を両手で覆う生徒。


「あ、ありがとうございます・・・っ!」

お礼を言うのはこっちだよ、ちょっとだけ微笑んだ陸に、かわいそうなくらい顔を沸騰させた生徒は脱兎のごとく廊下を疾走するのであった。


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ポチ子さま、リクエストありがとうございました!
リクエストに沿えているかどうか不安なのですが・・・管理人は執筆楽しかったです^^大変遅くなってしまい申し訳ありませんでした、よろしかったら受け取ってやってくださいませ!

101018/ミケ


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