「ゆず、」
くい、と袖を引っ張る陸。それに生返事を返した譲は、ごろりと寝返りを打って雑誌を読み続ける。
譲の寮部屋の寝室。男二人が寝転がってもまだまだ余裕のありそうなベッドの上で、ちょこんと座り込む陸。身長はそれなりにあるので、ちょこんという形容詞が似合わないだろうに、細すぎる体躯と子犬のような仕草のせいでちょこん、と座っているように見えるのだ。
その傍らで転がって雑誌を読む譲の服の裾を、くいくいと引っ張る陸。雑誌に夢中で反応を返さない譲にむうと口を歪め、目を細める。時折目をこする陸、どうやら寝起きのようだ。
「・・・、ゆずる」
見た目に合った少し低めの声。ハスキーなそれが、何時にもまして低く囁く。しかしそれにも「はいはい」と生返事をよこす譲に、不意に陸がベッドから立ち上がった。
「・・・ん? 陸?」
「・・・」
「どうした? ねむてェんじゃなかったのか?」
「・・・・・・」
外へ繋がるドアノブに手をかけて、顔だけ譲を振り返る。珍しくも、"不機嫌"を絵にしたような表情に一瞬譲が呆気に取られた。
「自分の・・・部屋で、ねる」
拗ねたように呟いて、そのままつんと顔を反らせる陸。そんな陸に驚いたように目を見開いた譲は、次いで苦笑を浮かべた。
読んでいた雑誌を閉じて、ベッドから身軽に飛び降りるとそのまま扉から出て行こうとする陸の背中を抱き締める。
「ほったらかしにて悪かった。・・・陸、拗ねんな」
「・・・、拗ねて、ない」
む、と顔を歪めて返答するが、抱き締められていることに反抗は見せない。眠いせいか幼い表情をみせる陸に、譲は甘く笑った。
「・・・陸、」
ほら、一緒に寝よう?
くつくつと喉奥で笑っている譲の、意地悪そうな表情とは裏腹な甘い声に、陸は小さく顎を引いた。
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シロナさま、リクエストありがとうございました!
構ってちゃんな陸・・・になってるでしょうか・・・!
執筆遅くなってしまい申し訳ありません、よろしければ受け取ってやってくださいませ!
100906/ミケ
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