ぐしゃりと掻き乱された髪の毛の隙間から、上目で譲を見つめる。
珍しくも耳まで真っ赤に染め上げた譲の様子に笑って、そっと手を伸ばした。
ペタンとソファに座り込んで甘く甘く笑う陸に、諦めたような、どこか満足気な溜息を漏らした譲は、赤い頬をそのままに陸の伸ばされた指先を絡めとる。
「・・・ゆず、る」
細く吐き出された息とともに、そっと囁かれたなまえ。衝動のまま、陸を抱き締めた。
数十分前に委員会の雑事を終わらせて、遅くに部屋に戻った譲をリビングで待ってたのはいとしい愛しい恋人の陸だった。
何故かシャツ(しかも譲の)を羽織っただけで、ソファで眠りにつく陸にふらりと眩暈を起こしかけたのは他でもない譲。断じて陸の白い足に欲情したわけでは・・・ないことはないけれど。仕事のし過ぎで判断力の鈍った頭を振り、リビングの入り口で止まっていた足を動かす。ソファの前までくれば、すぅすぅと陸の小さな寝息が聞こえてきた。
「ん、・・・」
人の気配に反応したのか、陸が微かに身じろぐ。それに少しだけ息を詰めて、そして何故だが緊張している自分自身に譲は小さく笑った。
このまま寝かせておこう、部屋着に着替えてきて、それでも寝てたら起こさないようにベッドに運んで、それで一緒に寝よう。
そこまで思考して、譲はそっと踵を返す。いや、かえそうと、した。
「・・・ゆ、ず・・・」
むにゃ、と陸が囁く。呼び止められたわけではない、きっと寝言。・・・いや、寝言だからこそ、陸の夢にまで己の存在があることに、胸の奥が熱くなった。
「・・・・・・、す、・・・き」
「・・・・・・・・・」
とどめだった。それはもう完璧なまでの一撃。というか一言。
かあ、と譲の頬が熱をもつ。掛け値なしの愛の言葉、恥ずかしがる陸の口から滅多に聞くことの出来ないそれ。
「ん、・・・あれ、・・・ゆず、・・・?」
「・・・・・・」
「おか、えり。寝てた・・・。・・・・・・? ゆずる?」
「・・・、ただ、・・・いま」
「・・・? なんか、赤い・・・」
くあり、ちいさく欠伸をもらす。ソファから身を起こした陸は、ピシリと固まった譲の姿に首を傾げる。赤くなっている譲に疑問符を浮かべたまま近付こうとして、押さえつけるように、撫でるように頭をグシャグシャにされた。
そして冒頭にいたる。
「陸、・・・」
「 ん 」
ちゅ、絡めた指先を口元に運んで、ちいさく唇をおとす。
いまだ残る赤みを誤魔化すこともしないで、譲はにっと笑った。
「あいしてる」
……………………
神那巍さま、リクエストありがとうございました!
溺愛・・・になってませんね!ただの甘いお話ですみません、でも楽しかったですv
遅くなってしまいましたがぜひとも受け取ってやってくださいませ!
100801/ミケ
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