艶やかな黒髪の綺麗な人が、人通りの多い道の端にぽつんと立っていた。テレビ越しでも滅多に見ることのできない美貌を持つその人は、長い睫を伏せて物憂げに佇む。思わず足を止めて彼に魅入ってしまったのは自分だけじゃない。立ち止まって凝視する人、通り過ぎた後でわざわざまた引き返してくる人、チラチラ見つめながら名残惜しげに歩いていく人。道行く人のほとんどが彼を見ていた。
それほどまでに美しいのだ。
「陸ー、またせたな」
「・・・譲、遅い・・・」
これまた美形が登場。なにこれなんかの撮影?ここらへんでなにかあるの?襟足の長い黒髪に散る青メッシュがよく似合う美形。陸と呼ばれた人とはまた違う、肉食獣のような雰囲気が漂うイケメンである。
「稜はどうした?」
え、なにまだ美形がくるの?譲くん(と呼ぶことにする)が首を傾げて陸くん(と呼ぶry)にたずねる。
「そろそろ、くる・・・。あ」
「ん? ああ、きたな。おい、稜こっちだ」
その言葉に反応して、ついつい辺りを見渡して・・・首を傾げた。それらしき人物が見当たらなかったからだ。
長身痩躯の哀愁漂う美青年に、肉食獣のような滴る色気の男前。そこにもう一人とくれば、期待してしまうのも仕方ないよね。次に現れるのはどんな美形?爽やか系だろうか、それとも女王さま系?・・・なんてちょっとわくわくしてるのは、なにも自分だけじゃない。まわりの人たちもきょろきょろしてるから。
・・・でもやっぱり、周囲の人たちもそれらしき人物を見つけられなくて首を傾げている。
「陸、譲くん。お待たせ」
え・・・?いやいやいやいや、うん。・・・え?
いや、うん、なんていうかその・・・ええ、ふ、ふつうだなあ・・・っ!
あ、いや!失礼だよね、普通って悪くないよ!よくよく見れば綺麗なような気もするけど・・・!・・・なんかちょっとゴージャスな美形想像してたから、その落差が、ね!
ちょ、あからさまに落胆した顔するのやめようよそこの人・・・!
ざわりと揺れた空気。気付いていないのか、・・・それとも慣れているのか。先に居た二人に比べると小柄な少年は、おっとりと微笑を顔に浮かべる。えーっと、確か、稜くん、だったっけ?
「俺は今来たとこだから気にすんな」
それににやりと色気たっぷりの笑みを返す譲くん。かっこいいなあ、なんて思ってると、どことなくぼんやりとしたイメージの陸くんが動いた。
「待って、ない・・・、だいじょうぶ・・・!」
ぎゅうぎゅうと稜くんの両手を握り締めて、ほわっと笑う。
・・・!!っなにあれなにあの可愛い生き物おお!!
譲くんと居た時のちょっと冷たそうな、クールで でも物事にあんまり興味ありません的なぼんやりっていうかまあ浮世離れした彼はどこへ・・・!!
まるで大型犬。ああ、盛大に揺れる尻尾の幻覚まで見えてきた。青い瞳を甘く甘く細めて、陸くんは稜くんに笑いかける。きらきらしたオーラまで見えてきて、首筋が熱くなった。あああ絶対いま自分顔真っ赤だよ。なにあの子・・・!周囲の人たちも、大なり小なり顔を赤く染めて陸くんに釘付け。
譲くんはどこか呆れたような表情を浮かべている。ってことは普段からあんな感じなんだろうか。
あーあ、あんな美形に間近で迫られたら、倒れちゃうんじゃない稜くん・・・?っていうか自分なら倒れる自信があるよ。
・・・なんて。
「ほんと?でも、約束の時間は過ぎちゃったし。・・・そうだ、陸。お詫びにアイス食べよう?譲くんにはコーヒーでいいかな?」
「あいす・・・!」
「ああ。じゃあ喫茶店にでもはいるか。甘いもんもコーヒーもあるしな」
稜くんは自分たち野次馬の想像を見事に裏切り、それはそれは綺麗に笑ってあっさりと返答をした。
ああ、あの三人っていいバランスとれてるんだね・・・!
とある休日
いやあ、にしても眼福眼福。いろいろとご馳走様でした。
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鏡雨さま、リクエストありがとうございました!
こんな感じに仕上がりましたっ、遅くなってしまい申し訳ありませんorz執筆とても楽しかったです!vV
100516/ミケ
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