さらさらと指を通り抜ける感触を楽しむように、何度も手を動かす西条。
図書室にて。ぱらりと、東雲が本を捲る音しかしない空間。熱心に本を読む東雲の横顔を眺めながら、その髪を指先で擽るように弄る。
さらりと、指の隙間から零れ落ちるように流れる金茶の髪の毛。今は本を見つめている瞳を縁取る、長い睫毛も同色なため地毛なのだろうと察しがつく。西条の指から零れ落ちるたびに、すべらかな白い肌に流れる髪の毛。透き通るほどに白く、不健康にさえ見える頬が薄っすらと朱に色付いていた。
「…西条、先輩」
「なんだ?」
本から目を離さず、少しだけ睫毛を震わせて東雲が口を開く。あの、と言い難そうに開かれた唇の動きを目で追う西条。
「…そんなに見ないで下さい…」
「? 気にするな」
「気にします。…そんなに見られると、本に集中できない…です」
頬をさらに染めて、恥じ入るように顔を伏せる東雲。さらさらと先ほどまで西条が弄っていた髪の毛が、東雲の横顔を隠す。流れた髪の隙間から見える形の良い耳が赤く染まっているのを見て、ふと西条が笑みを浮かべた。
薄藍色のピアスが光る耳元に手を伸ばす。指先で髪の毛を払って、つ…と耳の輪郭をなぞってみせれば、東雲の肩が敏感に跳ねた。
「っ、西条先輩…! …え、…」
驚いたように非難の声をあげ、次いで呆けたように言葉を漏らす。ぱちりと目を瞬かせた東雲の瞳に、西条の唇が近付いて。
す、と鼻先が頬を掠める。かすめて、そして。
「ひゃ、あ…!」
ぺろりと、ピアスに舌を這わせた。ぬるりとした感触に東雲が戦慄く。その反応を見て西条は満足そうに笑った。
東雲に見せ付けるように、唇を舐めとる。けらりとした表情なんて見事に崩れ去った東雲は、顔をこれ以上ないくらい赤くさせて本で顔を隠した。
2010/12/7