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どっちでしょう



西条先輩と会わないようにするのは、とても簡単だった。


うちの委員長がひねくれの者のため、図書委員の当番の日は一定じゃない。普通なら"毎週火曜日と木曜日が当番の日"なんて風に決まってるんだろうけど、それがないってことだ。一週間ずっと当番のときもあれば、当番のない一週間もある。かなり不定期だからこそ、最近は会った次の日が当番じゃないときはそれとなく伝えていた。けれど、それさえ言わなければ会わないようにするなんて簡単だった。

図書室にはなるべく近寄らないようにした。当番の日は、他の図書委員に頼んでなんとか回避していた。
廊下で会っても話しかけられない気はしたけれど、念のために前のように校内を闊歩することもなくなった。



今池さえ、転入してこなければ。
図書室の静かな空気に浸ってのんびりしていられたのに。
校内を勝手気侭に闊歩していられたのに。

……西条先輩と、話す機会もなかっただろうに。


遠い存在だからと半ば諦めかけていた心臓が、西条先輩との記憶を積み重ねるたびにどくりどくりと脈を早めていった。手に届く存在なのかもしれないと、錯覚してしまった。
途切れてしまう縁だったのに、希望と期待を知ってしまった胸の痛みは、以前とは比べ物にならないくらいに…痛かった。



偶然遠くから見かけた先輩は、昔通り役員の奴らと会話を交わし笑ってすらいたのだから、大丈夫。食堂では今池も交えてご飯を食べていた。やっぱり笑っていたから、大丈夫。俺がいなくたって、彼は平気。大丈夫。隊長のいってた支えの役割は、終わったんだ。

彼は大丈夫。もう、大丈夫。

……大丈夫じゃないのは、俺の方。


2010/11/4


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