11
途切れる



「それで、アイツこんなこと言って」
「アイツ、あの時にさ」
「聞けよ、アイツこんな事も知らなかったんだ」


……や、めて


「東雲、また今池が」



お願い、言わないで









先輩の口から、転入生…―、今池の名を聞くたびに心臓がどくどくと痛みを訴えた。口から漏れ出そうな悲鳴を必死に殺して、わらう。最近うまく笑えなくなってきた。どうしよう俺、笑うことしか…出来ないのに。


今池に掴まれていた肩は、赤く指の痕が残っていた。それほどに彼は必死だったんだろう、俺の顔に張り付いた笑みを、剥がそうと。彼の手を振り払った右手は、いまだに熱く痛むように感じた。



潮時、なんだよね。

乾いた笑い。


先輩が、少しずつこの図書室から遠ざかっていったら。外で会話をしたことなんて一度もないから、きっとそうなればもう俺と先輩の間にはなんの繋がりもなくなってしまうんだろう。

じわじわと、けれど確かに迫る終わりの恐怖に耐えられなくなった。

いつか、離されてしまう手なら。自分から離して笑った方が、楽だから。


2010/11/2


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