ぽたりと水面に雫が落ちる。それは水面に淡く波紋を描き、ゆるやかに消えていった。

「稜、…きもち、い?」
「んー」
「、そ、うか」

湯船からたちこめる水蒸気のために、乳白色に染まる視界の中。陸がやんわりと稜に話しかける。陸の足の間に座り込む形で、わしゃわしゃと髪の毛を洗われている稜は気持ち良さそうに返事を返した。それに陸は満足そうに微笑んで、手を動かす。

「なが、す」
「んー」

夢うつつに流れる時間。桂木兄弟はこの日、一緒にお風呂に入っていた。



ちゃぷりと軽い水音を立てて、二人で肩を並べて湯船に浸かる。ほわんと穏やかな表情でお風呂を堪能する陸と稜。

「陸、」
「、ん?」

青い瞳を細めてうつらうつらとしていた陸に、不意に話しかける稜。そういえば、と呟きながら陸と向き合うように身体を移動させて、首を傾げる陸の顔をじっと見つめる。
細い指が、陸の首筋に添えられる。
擽るようにそっと、ペタリと陸の首筋に張り付く髪を払って稜はにこりと笑った。

「…」

そのまま顔を寄せる。自然な動作で近付いてくる稜を警戒心も無くぼんやりと見つめる陸。

ちゅ

「!、っひ、あ、りょ、稜…!」

ちゅ、

「ちょ、…っ、稜…!?」

ちゅ、と軽いリップ音とともに鎖骨に唇を落とす。びくりと肩を震わせる陸を気にせず、少しずつ唇を下にずらしていく。

「陸、」
「…っ、りょう、」

ちゅ、と最後の口付けが心臓の上におとされる。ふるりと睫毛を震わせて、かそけく稜の名を呼んだ陸ににこりと笑いかけた。

「陸、大好きだよ。……びっくりした?」
「…りょ、う…。」

首をかしげて、申し訳なさそうに笑む。その表情にあれ?、と青い瞳を揺らして、陸が小首を傾げた。

「ごめんね、今日陸が色んなひとにキスされたって聞いたのを思い出して。」

先ほど唇を落としたばかりの心臓の上に、指を這わせる。淡く、稜が微笑んだ。


「大好きだよ、陸」


心臓の上に口付け

 
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