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(第三者視点)



ぺこりと、高貴に対して緩やかに頭を下げる陸。
か細い声で礼を述べる彼の肩には、高貴の制服がかけられていた。

もちろん、陸の破られた制服に配慮しての行動である。そのまま無言で保健室まで送ってもらった陸は、なんだか様子のおかしい高貴に首を傾げる。

まんまるの瞳は思索にふけり、いつも快活に笑っている口元は硬く引き結ばれていて。


ぐるり、ぐるり。

少しずつ変化していく、陸を取り巻く環境。





―・・・不変のものが欲しかった。




陸の隣にいるのは稜と譲の二人だけでよかったし、陸を温かく見守るのは両親だけでよかった。
あたたかくてちいさな、箱庭のような世界。・・・陸に優しい世界。


転校生が来たことによって、他役員の仕事をするようになって。そのことによって関わりができたひとたち。陸の望む静かな空間が、少しずつ壊されていく感覚。


陸は恐れる。優しい世界をとりまく殻が壊れたとき、なにがおこるかわからないから。


世界はおそろしさに満ちていると、思っているから。




高貴をちらりと見た陸は、薄く唇を噛み締めた。





2010/08/07/


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