80
(王道主人公視点)



おれの腕の中でガクガクと震える細い身体。
触れた指先がびっくりするぐらい冷たくて、可哀想なくらい怯える陸の身体に、おれの体温を移すようにぎゅうと抱き締める。

睨みあげた目線の先は仁。ひどくうろたえたような表情で立ち尽くす仁を、きつく睨みつける。



数時間前、生徒会室から逃げるように立ち去った陸の後を追いかけた。意外に足が早かったらしい陸の姿は、竜の制止を振り払ってる間に消えてしまっていて。
ただ当てもなく校内を走り回って、ようやくみつけた。でも見つけた陸は、一人じゃなくて。ずるずると引きずるように陸をつれていく仁。

もしかして、おれが探し回ってることを知って陸のことを捕まえててくれたのかな。なんて期待したのも一瞬。
仁に引きずられる陸の乱れた服装に、頭に血が昇った。




「陸、大丈夫だから。怯えないで・・・?」
「い、やだっ、はなせ、・・・っ!」
「陸、陸、陸、だいじょうぶ、だいじょうぶだから。」
「やめろ・・・っ、俺に、さわ、っ触るな・・・!」


恐慌状態の陸は華奢な腕を振り回して、おれの腕の中から抜け出そうと必死にもがく。ぶっちゃけ、身長が高いだけで腕力なんて無に等しい陸の抵抗なんて可愛いらしいものだ。
でも、おびえて暴れる姿に、胸がいたむ。


「陸、だいじょうぶ。だれも陸のこと、傷つけないから。」

いまだに呆然と立ち尽くす仁から目を離して、陸を見つめる。


「・・・もし居たとしても・・・おれが、」


いやだいやだいやだ、やめろ触るな。
泣いてこそいないが、わめく陸を正面から抱きすくめる。陸のほうが背が高いから、包み込むようにとはいかないけれど。

薄っすらと涙の膜を張る青い瞳に魅入られて、言葉を紡いでいる・・・とちゅうで。


「ねえ、うるさいんだけどお」


透き通るように高い声が、不意に意識に割り込んできた。


(おれが、・・・?)
(・・・おれは、)
(・・・・・・なにを言おうと・・・してたんだろう)

おれが、陸を守るから





2010/07/21/


prev next

MAIN-TOP

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -