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(第三者視点)



ずるずると半ば引きずられるようにして歩く陸。しっかりと掴まれた腕から伝わる体温に少しだけ眉を顰めて、それでも大人しく仁の後ろをついていく。


染められた頭髪に着崩された制服。鋭い眼光をもつ生徒が引きずるように連れて歩くのは、艶やかな黒髪の生徒。身長は同じくらいだが、身体の細さが違う二人。

あきらかに今から襲う人間と襲われる人間にしか見えないわけで。

とどめのように、黒髪の生徒・・・陸の制服が明らかに乱暴された後のように乱れているのだから、もう。




「仁・・・っ!!」
「あ・・・? 道哉?」


突如として廊下前方に現れた道哉が、悲痛な顔をして叫ぶ。そのまま素晴らしい勢いで二人の眼前まで迫った道哉は、呆気に取られる仁を一瞥して陸をつかんでいた手を払った。


「っなんだ、どうしたってんだよ、みち」
「さいていだ!」
「・・・あ?」


目を丸くさせて、ぽかんと口を開く。二人がもめているうちに、と逃げ出そうとしていた陸の腕を今度は道哉が掴んで、思い切り引き寄せた。
勢いのまま不本意ながらも道哉の胸元におもいっきりダイブしてしまった陸を、道哉はそのまま抱き込む。

いまだ呆気にとられた表情の仁に向かって、震える声で叫んだ。


「いくら、・・・いくら仁だからって・・・! 陸になんかしたら許さない・・・っ!」
「・・・りく?」

その名前に反応して、仁の目が叫ぶ道哉をスルーして陸に向く。道哉の胸元で必死に抜け出そうともがいていた陸は、仁の声に反応してそちらに目を向ける。



あ、やべ。


小さく胸の中で呟く。驚きに瞠られる仁の目に、陸は道哉の腕の中でがっくりと項垂れた。





2010/07/15/


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