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(雨宮視点)



苛々する。

胸の奥にもやもやとしたどす黒い感情が広がって広がって広がって。
完全に暗闇に覆われる寸前で、眩しいほどの光が一筋胸に差し込む。
差し込んだ光につれられて明るくなった胸中は、再びもやもやとしたものを抱え込み始める。

永遠に続くその繰り返し。


彼、秋月道哉と出会ったときから続く最悪で最愛のループ。




道哉はお世辞にも綺麗とはいえない外見をしているけれど、彼は短気で喧嘩っ早いオレに、初めて笑いかけてくれた人だ。
伸ばされた前髪の下にのぞく唇が、なんの含みもなく純粋に笑ったあの瞬間から、オレは道哉の近くに居続けた。

見た目に似合わず喧嘩の強い道哉は、暴れそうになるオレを押さえ込んでくれて。
暴れたことを後悔するオレに笑いかけてくれて。
それだけで幸せだった。
苛々とした気持ちに任せて、他人を殴らずに日々を過ごせた。

・・・―だというのに。


道哉が生徒会の奴らに目をつけられてから、奴らによる妨害の嵐が続いた。ちょっと目を話した隙に、道哉を連れ去っていく憎憎しい集団。
補佐の奴ら以外は全員オレより年上だが、そんなのどうでもいい。関係ない。ただ、道哉を奪うあいつらが憎かった。


もちろん生徒会の中にも、道哉に興味のない奴はいる。一人だけだが、書記の桂木陸とかいう男は道哉に興味を持たない。

さらりと伸びる艶々とした黒髪が、道哉と同じように顔を隠しているのに、それでもどこか秀麗な雰囲気を漂わせる人物。
道哉に近づかないならいい。興味なんてなかった。

眼中になかった存在が、目に入るようになったのは最近。
道哉が、あいつに興味をもってしまったから。

誰にも平等に接してきた道哉が、初めて興味を持って無視されても話し掛け続ける存在。

それだけであいつは、学園中の誰よりも憎い人物になった。





ああ、でも。



あの青い瞳だけは、頭から焼きついて離れないけれど。





2010/07/02/


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