(第三者視点)
パタパタと、軽やかな足音を立てて廊下を走る陸。
きらきらと窓ガラスに反射する日差しを浴びて、ひたすらに人気のない廊下を走る。思い出すのは、他人の体温。三対の無粋な腕と、翡翠色の瞳。前者も後者も、陸にただ恐怖を与えた。
・・・― 後者はもしかしたら、恐怖だけではなかったかもしれないけれど。
破られた制服を両手で庇いながら、寮の自室へ駆ける。寮へと続く渡り廊下への最後の曲がり角を曲がったところで、陸は思い切りよろけた。
「っ・・・!」
「・・・あ?」
ドンッ
陸と同じタイミングで廊下を曲がってきた人物に、思い切りぶつかって後ろへよろめく。ぶつかった相手との体格差からか、そのまま腰を打つように廊下へ座り込んだ陸は、ぶつけた額を押さえて上を見上げる。
威嚇するように低い声。陸がぶつかった相手は。
「・・・あまみ、や・・・?」
「・・・誰だてめえ」
日に透かすと金色に輝く茶色の髪の毛。陸を睨むように細められた瞳は鋭く、陸は小さく息を呑んだ。
脳裏によみがえる暴力。
・・・一難去ってまた一難とは、このことか。
見下す視線に、小さく身震いした。
2010/06/23/