(赤崎視点)
ただゆったりと。
襲われたことからくるショックだけでなく、恐らく自分同様に元々口数が少ないであろう生徒に表情を緩める。
ゆっくりと流れる時間。人形のように凍てた表情とは裏腹に、無垢に見上げる青色の瞳に目を奪われて仕方なかった。それはまるで、自然を愛でるような気持ちで。
いくら手を伸ばそうとも届かない空が、近くに在るように感じられた。から。
ベロリ、と。
舐めた瞬間、己にとったら非力ともいえるほどの微弱な力で突き飛ばされた。
「っな、なめ・・・っ」
「・・・舐めた?」
「う、あ・・・な、なん・・・」
「・・・なんでか?」
ほのかに色づいていた頬は完全に血の気が失せてしまい、真っ青な顔で己を凝視する陸。どもる陸の言葉を繋げてやれば、こくこくと必死そうに頷く陸の姿にすこし笑みが漏れる。
「・・・どんな味か、・・・気になった」
甘いのかと思ったのに。
「涙・・・しょっぱかった」
ぺろ、いいながら己の唇を舐めてみせれば、陸の顔がどんどん赤くなっていく。
「っばか、か・・・っ!!」
首まで赤くした陸が、きっと睨みあげてくる。
それにも笑みが零れて、自分で自分がおかしくなったんじゃないかと危惧した。
・・・こんなにいっぺんに笑ったのは、初めてかもしれない。
まあ。
ぼふん、と力いっぱい投げられた枕は避けたけど。
2010/06/09/