(主人公視点)
ぐらぐらと安定しない脳みそ。気持ち悪さを伴った目覚めに、ひどく泣きたい気持ちになった。ここが何処なのかはわからない。・・・どうでもよかった。
吐いた溜息は細く震えていて、情けなくなる。
いやな、夢をみた。
服を引き千切る無骨な手。びり、といやな音とともに引き千切られたそれに呆然とする。抵抗する己の腕を抑える、無数の手。他人の体温を纏った幾つものそれに身震いした。泣き叫ぼうにも、喉は震えるだけで声を発さない。いやだいやだいやだ、ぐるぐるとその言葉だけが頭の中を回り続ける。押し倒された地面から草のにおいがして、何がなんだかわからなくなった。視界の端に、服を千切られた時に落ちたのだろう制服のボタンが見えて、意味もなく目の奥が熱くなる。
譲、稜。
・・・その名前を叫んだ気がする。
保健室や寮のとは違う、パイプベッドの上に寝転がったまま震える肩を抱いた。
いやな夢。気持ち悪くて、泣きたくなるほど酷い夢。
その筈、なのに。
破れた制服に現実を見せ付けられて、どうしようもなかった。
2010/05/28/