(第三者視点)
ぐらりと、腕の中で意識を手放してしまった陸を見下ろす。
赤崎啓はその美貌もさることながら、強姦やリンチが嫌いなことでも有名である。・・・訂正しよう。
赤崎啓は、"目の前で"強姦やリンチをされることが嫌いである。
理由といえば、めんどくさいからだとか加害者である他人の醜さを見たくないからだとか様々ある。
その中でも一番の理由は、最低限の接触でも嫌気を差す他人というモノの、無様な姿を見たくないから、だった。
泣き叫ぶ人間の喚き声も泣き声もなにもかもが煩わしかった。しかし、仮にリンチの現場に居合わせたとして自分がその場を立ち去るのはめんどくさい。・・・啓はこう考えた。
ならば、強姦やリンチを起こす元を無くせばいい、と。
そうしてその現場に居合わせるたびに加害者を潰してきた結果、強姦やリンチが嫌いであるとの噂が流れたのだ。間違ってはいないが、本質としては大分違ってくる。別に目の前で行われてさえいなければ、関知はしないのだから。
泣き叫ぶ声がイヤだ。呻き声ともつかぬ喚きを漏らし、涙を流す顔がイヤだ。
イヤだ、と、思っていた。のに。
涙を零すまいと、滴を瞳に溜めながらも耐える姿を純粋に綺麗だと思った。…そんな自分が居たことに戸惑いすら覚えた。
2010/05/19/