(第三者視点)
がくがくと震える身体。引き千切られたカッターシャツの前を手繰り寄せて、小さく嗚咽を漏らす陸。
「・・・っ、う、あ」
それを静かに見下ろす啓。翡翠色の瞳が震える陸を映す。
「・・・、」
「う、・・・、だ、れ・・・っ、?」
「・・・・・・。」
無機質なのにどこか甘い瞳が、陸を見て薄っすらと細まる。ひくりと白い喉を震わせて陸は啓を見上げる。
だれ、だれ?きみはだれ?
小さく怯えながらも首を傾げる陸に、啓は手を伸ばした。
「っ、や、・・・だ!」
己に伸ばされる大きなてのひらに、陸はびくりと一層大きく身体を揺らす。そんな陸に怯むことなく、啓は手を伸ばして陸の身体に触れる。
「や、やだ、い、や・・・!、さわ、さわるな、・・・っ!」
「、・・・」
「っう、あ・・・!ゆず、りょお・・・っ!!いやだ・・・っ!」
「・・・、・・・・・・」
じたばたと暴れる手足ごと、陸の身体を抱きしめる。
嫌だ否だイヤだ、泣き続ける陸の背を宥めるように撫でて、それでも抱きしめる力を緩めることはない。
暴れる指先が頬を掠めようと、頓着することなく陸を抱きしめる。破られたカッターシャツに眉を顰めて、今は服に隠れて見えないけれど確かにつけられていた腹の痣にそっと手を置く。
「・・・、お前を、傷つけはしない・・・」
「ひ、う・・・っ」
艶やかな低音。発せられた言葉に、陸が嗚咽を漏らす。
「・・・、静かに・・・していろ」
「・・・っう、・・・あ・・・」
ゆるり、かき混ざられるように撫でられた頭に、ゆっくりと意識が闇に沈んでいった。
それは果たして、安心故か。それとも、度を過ぎた恐怖からか。
こたえは、誰にもわからないけれど。
2010/05/18/