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(王道主視点)



「・・・陸、」


尊、・・・木野せんぱい、が。
ひどくやさしい声で陸の名を呼ぶ。呼ばれた本人である陸の姿は木野せんぱいに隠されて見えない。



おれの前に立っている竜は木野せんぱい、・・・いや、恐らくは陸の方をじっと見たまま動かない。眉間に深く刻まれた皺。苛立ちと、どこか悲しげな表情に心配になる。でもそれよりも気になることがあった。


木野せんぱいが陸をみて言った言葉。
"前髪を切った"だとか。
"綺麗だ"とか。




艶やかな黒髪からのぞく青い瞳が脳裏によみがえる。



見たい見たい見たい!


欲求のままに足を動かす。竜の静止の声が聞こえたような気がする。でも気にしない。だっておれはいま、陸の顔がみたいから。隠されることなく晒される瞳に興味があった。



距離にしてみれば十歩ほど。木野せんぱいの横に立って、少しだけ見上げたそこには。



「っすげー!!」
「、っ!?」

白い頬、青い目。綺麗な綺麗な、


「お前陸かっ?ちょーきれい!!なんだこれ、宝石みてえ!」

いままで相当数綺麗なやつを見てきたけど、こんなに綺麗なやつは見たことがない。男にも女にも、これに敵う容姿の持ち主なんていなかったように感じる。


蛍光灯の光を反射してきらきら光る、海の水面みたいな目。


「なんで今まで顔隠してたんだっ?もったいない!すっげえ美人だなっ、陸!」
「・・・、う・・・」
「?どうした陸?」
「や、」


切れ長の目を驚いたように見開いて、丸い瞳を不安げに揺らす。小さく開かれた薄紅色の花びらみたいな薄い唇。木野せんぱいに握られた手に力をこめるその姿は酷くあどけなくて、庇護欲をそそられる。
木野せんぱいじゃなくて、おれの手を握り締めればいいのに。なんて、おれより背の高い陸を見上げながら思う。


陸、陸、陸。





陸から香る、甘い甘い匂いにくらりとした。





2010/05/06/


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