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(第三者視点)



「……陸、ちゃん」

横たわる静寂、張りつめた空気を破る一声は、微かに震えていた。

悪趣味なほどに赤い絨毯。飾られた絵画に目を向けていた陸は、茜の声に無言で視線を向ける。表情も身体も微動だにせず、目だけを動かす陸に、茜は悲しそうな表情を一瞬だけ浮かべた。

たった今陸から告げられた言葉は予想外に鋭利で、茜の胸に突き刺さる。



"興味ない"

感情の動きすらない瞳。冷たい声色。


どうでも良いはずだった陸の言葉が、ただ痛い。
苦しくなった呼吸に、茜は無意識に制服の胸あたりを鷲掴んだ。
へら、ゆるい笑みを浮かべて、茜は首をかたむける。


「…陸ちゃん、……」

答えて応えてこたえて、ねえ。
応えてよ。

子供のような叫びを孕んだ声と、茜のゆるい笑顔があまりにもミスマッチで。

片眉を跳ね上げた陸に、茜は笑った。どんな感情であれ、動いた表情に何故か歓喜した。


「陸ちゃん、」
「……なんだ、会計」
「…茜って、……呼ん、で…?」

おれを、意識してよ。


胸に浮かんだ自分の感情に、ただ茜は微笑んだ。


名前を呼んで、おれをみて。…興味ないなんて、言わないで。



それはまるで幼子の我が儘。わかってるのに、茜はひたすらに陸に意識されることを願った。



胸の奥、微かに宿った感情に気付く日はくるのだろうか。




ただその時だけは、茜の中を道哉ではなく陸が占拠していたのは確かで。








自分の思いがどこに向かっているのかわからなくて、茜はただ途方に暮れた。





2010/04/19/


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